9月13日、当教室員が大勢お世話になっている松前町立松前病院に出かけた。札幌駅から千歳空港、函館空港、そして小本事務長運転の病院車と乗り継いで出発から到着まで約5時間。
松前町立松前病院は、木村眞司院長を中心に「全科診療医」による診療を謳っている。外科系医師が不在になったのをきっかけに「全科診療医」を謳い、今は整形外科疾患等にも対応している。断らない救急医療を掲げ、日常疾患に「全科診療医」が対応し、手術や高度医療が必要な疾患は函館の3次医療機関に任せる、高齢者にニーズのある耳鼻科・眼科などは大学等の非常勤で対応するなどの方針をとっている。加えて一番の特徴は、札幌から時間的アクセスが最長であるにもかかわらず、学生・研修医の実習の受け入れが非常に多いということであろう。今回も、市立函館病院から佐々岡悠太さん、手稲恵仁会病院から高橋利佳さん、筑波大学5年生菅沼大輔さん、札幌医大5年生和田朝香さんが2週間から1カ月の日程で参加している。因みに昨年1年間でみると松前町立松前病院の札幌医大総合診療科実習受け入れは18名と参加施設最多であった。
町長、町議会議長にもお会いすることができた。松前町の医療は、松前町と病院事務、医療スタッフが一体となって取り組んでいることが最大の特徴であり強みかもしれない。国からの補助金があるとはいえ、町長の言によると昨年の病院会計は9千万円の黒字であったそうだ。道内・道外の市町村職員の視察も増えているようだ。町議会における議員からの松前町立病院に対する不満は皆無になったという。町外での検査・治療費が減り、国保会計からの出費減少が大きいということだ。総合医・家庭医を中心に地域医療を実践することが、住民・患者の満足だけでなく、経営的にも満足ゆくものであることを松前町立松前病院が示してくれた。
単に医師数を増やすということで地域医療の問題が解決するとは思われない。松前町立松前病院のような総合医・家庭医を中心にした医療が実践できるよう、国の政策に積極的に取り入れて欲しいものである。(山本和利)