今回は、「がん疼痛のマネジメント」の各論である。
がん患者の70%が痛みで困っている。
がん性疼痛の特徴
・主観的な体験
・がん診断時に25-30%、終末期に70-80%に出現
・15%の患者が1か所、60%が2か所、25%が4か所以上の疼痛を自覚する。
・原因
がんによる疼痛
がん治療による疼痛
がんに関連のない疼痛
オンコロギー・エマージェンシー;腸閉塞、病底骨折、圧迫
・全人的な苦痛;身体的、社会的、精神的、スピリッチュアル
痛みを評価するスケールが大切。鎮痛の評価に使いたいからである。
がん性疼痛の分類
・体性痛:部位が限局、明確(うずく、差し込む、鋭い痛み)
・内臓痛:局在が乏しく、不明確(押される、鈍い)
・神経因性疼痛:しびれ、電気が走る、焼けつく
疼痛コントロールの目標
1.痛みに妨げられずに夜は良眠できる状態
2.痛みで安静が妨げられない状態
3.痛みにより体動が妨げられない状態
がん治療の原則
・経口剤
・時刻を決める
・痛みの強さに応じた薬剤
・患者ごとに適量を決める
・服用に際して細かな配慮
・鎮痛補助薬を用いる
三段階除痛ラダ―に則る。(1.非オピオイド性鎮痛薬(NSAIDs,
アセトアミノフェン)、2.弱オピオイド、3.強オピオイド)。日本では医療用麻薬の使用がまだまだ少ない。
第一段階:NSAID
プロスタグランジンが生成される過程の酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する。がん性疼痛に対するベースライン的役割。骨転移による疼痛に対して。疼痛増悪時のレスキューの一つの選択として。
アセトアミノフェン
中枢性の鎮痛と解熱作用を有する。一日2400-4000mgの使用が可能。一日4回が原則。NSAIDと相乗効果がある。
第二段階;弱オピオイド
ペンタジンは使わないこと(作用時間が短く、薬物依存になりやすい)。受容体は3つ、μ、κ、δ。コデインは10%が脱メチル化されてモルヒネになる。レペタン、トラマールは麻薬ではない(処方しやすい)。
第三段階:強オピオイド
モルヒネ、フェンタニール、オキシコドン(将来メサドン、ハイドロモルヒンも解禁されよう)
腎機能障害にモルヒネ、コデインは避ける、呼吸困難にはフェンタニールを避ける。便秘にモルヒネを避ける。静脈注入によるレスキューは2時間量を早送りする。3回以上レスキューするなら翌日から増量する。オキシコドンは腎障害にも使える。
先行する非オピオイド性鎮痛薬は中断しない。経口モルヒネ60mg・日で50%の患者に効く。増量は30-50%。副作用を考える。
オピオイド・ローテーション:有害作用をコントロールできない場合、別のオピオイドに変えて等価量の50-75%で開始する方法。
オピオイドが効きにくいとき、鎮痛補助薬を用いる。
・三環系抗鬱薬:ノリトレン、アモキサン、トリプタノール、トフラニールを小量使用。
・抗けいれん薬;リリカ、リボトリール、デパケンを少量から開始する。
・抗不整脈薬:メキシチール、タンボコール、キシロカイン
・ケタミン
・放射線治療:骨転移症例に有効である。
今回は、作用機序や使い方を理論的に話してもらった。次回は、疼痛以外の症状への対応について、事例を中心に話してもらう予定である。(山本和利)