この患者さんは、軽度の炎症反応を示したが、胸部XP,CTで異常を認めなかった。喉頭鏡でも閉塞はなかった。しばらく抗菌薬治療を試みみたが、座位によっての喘鳴は続いていた。
いろいろ考えた末、肺塞栓症ではないかと思い至った。肺塞栓の診断基準であるWell’s Scoreが3点(心拍数>100/分と長期臥床)である。Dダイマーを測定してもらったところ、やや正常値を越えていた。そこで肺の造影CTで確認をしてもらったが、肺塞栓症の所見は認めなかった。その後、症状は徐々に改善したという。
最近手にした『mechanisms
of clinical signs』という書籍によると臥位呼吸(platypnea)として記述がなされている。原因の1つは心臓内に右・左シャントが起こるためで、ASD,PFD等の先天性心疾患、肺切除が挙げられる。もうひとつの原因は、肺高血圧や右房圧の上昇であり、肝肺症候群、呼吸器疾患、COPD,肺塞栓症、ARDS等がある。静脈から動脈への血流シャントがその機序と説明されている。
ときに、肝硬変患者で酸素飽和度が著しく低い患者が出会うことがある。これは当に肝肺症候群であり、その機序は1)びまん性の肺内シャント、2)血管収縮による換気不良、3)V/Qミスマッチ、4)胸水や横隔膜機能低下が挙げられている。
まれであるが、臥位呼吸を見たら、右・左シャントや肺高血圧等の基礎疾患が潜んでいないか疑ってみる必要があるようだ。(山本和利)