『極北クレーマー』(海堂尊著、朝日新聞出版、2009年)を読んでみた。
北海道の地域医療を扱っている。一般病院や地域医療の現場に詳しい者にとっては、「極北市民病院」の職員の待遇・勤務態度等が現実にはありえないほどひどい設定なので、はじめはあきれるかもしれない。この「極北市民病院」は、札幌から車で1時間であること、市長の放漫経営により巨大な累積赤字を抱えて財政破綻したこと、病院の救世主として有名医師が乗り込んでくること等を勘案すると、夕張市立病院がモデルになっていると思われる。また、福島県で起きた産婦人科の医療事故の問題をその中に入れ込んで、かなりのスペースを割いている。医療事故に関して個人の問題と矮小化せず、関係者全体で取り組まなければならないという姿勢は高く評価したい。また『日本医療業務機能評価機構』の在り方について、痛烈に厚生労働省の天下り体質を批判した書でもある。
著者は、最終ページでこの病院に関わった者たちの顛末を皮肉っぽく書き連ねてゆく。「救世主の記者会見は果てしなく続き、終わりそうにない。・・・」「救世主」が乗り込んできて「極北市民病院」は再生したのか。そこに答えは書かれていない。(山本和利)
札幌医科大学 地域医療総合医学講座
2010年9月8日水曜日
兵庫医科大学講義「曖昧さを科学する」
9月7日、9:00-10:15は臨床疫学的診断法、すなわちDL. SackettのClinical Epidemiology A Basic Science For Clinical Medicine 2nd Editionを参考にして作った講義資料で、診断パターン・感度・特異度・検査前確率を解説した。具体的には年齢・性別の異なる3例の前胸部痛患者のシナリオを提示し、学生個々に検査前確率を想定してもらい、提示した感度・特異度・検査前確率を用いて2×2表で検査後確率を算出させた。またHC. SoxのMedical Decision Making(1988年版)を参考にした講義資料(十二指腸潰瘍の穿孔による腹膜炎症例)を基に、離島の環境を設定した場面(治療するかしないかのどちらか一つしかできない)で治療閾値について解説した。
10:25-11:40は、「あいまいさを科学する」授業。腹痛患者のシナリオを提示し(Fits-Hugh-Curtis症候群)診断プロセスを解説した。鑑別診断の仕方に重点を置いた。ABCアプローチ[Anatomy(解剖)とByoutai(病態)、Critical(致死的)、Common(頻度が高い)、Curable(治療法がある)]を強調した。最後に米国の家庭医療学の本からとった16例のケーススタディを行った。
一方的に講義をするのではなく、学生に問いかけながらの授業は、はじめ学生に戸惑いもあったようだが、慣れるにつれ眠り込む学生の少なく、評判も上々であった。(山本和利)
10:25-11:40は、「あいまいさを科学する」授業。腹痛患者のシナリオを提示し(Fits-Hugh-Curtis症候群)診断プロセスを解説した。鑑別診断の仕方に重点を置いた。ABCアプローチ[Anatomy(解剖)とByoutai(病態)、Critical(致死的)、Common(頻度が高い)、Curable(治療法がある)]を強調した。最後に米国の家庭医療学の本からとった16例のケーススタディを行った。
一方的に講義をするのではなく、学生に問いかけながらの授業は、はじめ学生に戸惑いもあったようだが、慣れるにつれ眠り込む学生の少なく、評判も上々であった。(山本和利)
兵庫医科大学講義「医療と社会」
9月6,7日、兵庫医科大学医学部5年生を対象に「医療と社会」という講義を行った。
早朝便で神戸空港に到着。関西は札幌よりも暑い(35℃)。今回は1コマ75分授業を2日間でまとめて5回行うハードスケジュールである。ハーバード大学のマイケル・サンデル哲学教授が『正義』について学生と対話型の『授業をすすめて話題になっている(東京大学でも講義をし、NHKでTV放送される)。そんなこともあって今まで以上に学生との対話を重視して授業を進めた。
導入はアジアで作られたドキュメンタリ映画の一場面から入った。「洗濯ばさみを瞼に挟んでいる二人の少女の写真」「家の前に山のような堆積物の前に立つ少年」等。写真を提示して、学生に問いかけた。その後、「井戸を掘る医者」中村哲先生の言葉を紹介した。「人生思うようにはならない」、大切なことは「人間として心意気」、必要とされていることをする「何かの巡り合わせ」でする。映画「ダーウィンの悪夢」を例にして、それぞれが最善を目指した結果、「ミクロ合理性の総和は、マクロ非合理性に帰結する。」「個々にとってよいことの総和は、全体にとって悲惨にある。」と結論づけ、地域医療にも当てはまるのではないか?と学生に問いを投げかけた。次に、「世界がもし100人の村だったら」(If the world were a village of 100 people)という本を紹介した。ほとんどの学生は読んでいない。
ここから、医療の話。1961年 に White KLによって行われた「 1ヶ月間における16歳以上の住民健康調査」を紹介した。日本も北米も大学で治療を受けるのは1000名中1名である。次に、「医療とは」何かを知ってもらうため、ウィリアム・オスラーの言葉を引用した。「医療とはただの手仕事ではなくアートである。商売ではなく天職である。医師は特定の技能をもつ者として権力から守られるという特権が与えられている。一方で公共に尽くすという使命があるということを強調した。
2コマ、3コマ目で、私自身の静岡県佐久間町の地域医療活動を紹介。その後、オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』に収録されている、診察室では「失行症、失認症、知能に欠陥を持つ子供みたいなレベッカ」、しかし、庭で偶然みた姿は「チェーホフの桜の園にでてくる乙女・詩人」という内容を紹介した。次にAntonovskyの提唱する健康生成論(サルトジェネシス)を紹介。病気になりやすさではなく、逆に健康の源に注目。健康維持にはコヒアレンス感が重要らしい。
医学教育における視点の変化(ロジャー・ジョーンズ、他:Lancet 357:3,2001)を紹介。
研修医、総合医には、持ち込まれた問題に素早く対応できるAbility(即戦力)よりも、自分がまだ知らないも事項についても解決法を見出す力Capability(潜在能力)が重要であることを強調した。N Engl J Med の編集者Groopman Jの著書 “How doctors think” (Houghton Mifflin) 2007を紹介。60歳代の男性である著者が右手関節痛で専門医を4軒受診した顛末が語られている。結論は“You see what you want to see.”(医師は自分の見たいものしか見ていない)。
ここで医学を離れて、考古学の世界「神々の捏造」という本を紹介。次に「狂牛病」の経緯を紹介。1985年4月、一頭の牛が異常行動を起こす。レンダリング(産物は肉骨粉)がオイルショックで工程の簡略化により発症を増やしたと考えられる。1990年代に英国で平均23.5歳という若年型症例が次々と報告。社会のちょっとした対応の変化が医療に影響する。
次に農業の話。Rowan Jacobsen「ハチはなぜ大量死したのか(Fruitless Fall)」を紹介。2007年春までに北半球から四分の一のハチが消えた。何が原因か科学的に検証してゆくが、その結末は?
授業の後半は、ナラティブの話。6つのNarrative要素:Six “C”を紹介。
はじめてぶっ続けで3コマの授業をしたが、声が嗄れ、腰が痛くなった。
今回の授業は北海道大学で2年生に行った授業とほぼ同じである。詳細については、2010年5月10日、5月24日の本HPに記載したので、興味のある方は是非そちらを参照していただきたい。(山本和利)
早朝便で神戸空港に到着。関西は札幌よりも暑い(35℃)。今回は1コマ75分授業を2日間でまとめて5回行うハードスケジュールである。ハーバード大学のマイケル・サンデル哲学教授が『正義』について学生と対話型の『授業をすすめて話題になっている(東京大学でも講義をし、NHKでTV放送される)。そんなこともあって今まで以上に学生との対話を重視して授業を進めた。
導入はアジアで作られたドキュメンタリ映画の一場面から入った。「洗濯ばさみを瞼に挟んでいる二人の少女の写真」「家の前に山のような堆積物の前に立つ少年」等。写真を提示して、学生に問いかけた。その後、「井戸を掘る医者」中村哲先生の言葉を紹介した。「人生思うようにはならない」、大切なことは「人間として心意気」、必要とされていることをする「何かの巡り合わせ」でする。映画「ダーウィンの悪夢」を例にして、それぞれが最善を目指した結果、「ミクロ合理性の総和は、マクロ非合理性に帰結する。」「個々にとってよいことの総和は、全体にとって悲惨にある。」と結論づけ、地域医療にも当てはまるのではないか?と学生に問いを投げかけた。次に、「世界がもし100人の村だったら」(If the world were a village of 100 people)という本を紹介した。ほとんどの学生は読んでいない。
ここから、医療の話。1961年 に White KLによって行われた「 1ヶ月間における16歳以上の住民健康調査」を紹介した。日本も北米も大学で治療を受けるのは1000名中1名である。次に、「医療とは」何かを知ってもらうため、ウィリアム・オスラーの言葉を引用した。「医療とはただの手仕事ではなくアートである。商売ではなく天職である。医師は特定の技能をもつ者として権力から守られるという特権が与えられている。一方で公共に尽くすという使命があるということを強調した。
2コマ、3コマ目で、私自身の静岡県佐久間町の地域医療活動を紹介。その後、オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』に収録されている、診察室では「失行症、失認症、知能に欠陥を持つ子供みたいなレベッカ」、しかし、庭で偶然みた姿は「チェーホフの桜の園にでてくる乙女・詩人」という内容を紹介した。次にAntonovskyの提唱する健康生成論(サルトジェネシス)を紹介。病気になりやすさではなく、逆に健康の源に注目。健康維持にはコヒアレンス感が重要らしい。
医学教育における視点の変化(ロジャー・ジョーンズ、他:Lancet 357:3,2001)を紹介。
研修医、総合医には、持ち込まれた問題に素早く対応できるAbility(即戦力)よりも、自分がまだ知らないも事項についても解決法を見出す力Capability(潜在能力)が重要であることを強調した。N Engl J Med の編集者Groopman Jの著書 “How doctors think” (Houghton Mifflin) 2007を紹介。60歳代の男性である著者が右手関節痛で専門医を4軒受診した顛末が語られている。結論は“You see what you want to see.”(医師は自分の見たいものしか見ていない)。
ここで医学を離れて、考古学の世界「神々の捏造」という本を紹介。次に「狂牛病」の経緯を紹介。1985年4月、一頭の牛が異常行動を起こす。レンダリング(産物は肉骨粉)がオイルショックで工程の簡略化により発症を増やしたと考えられる。1990年代に英国で平均23.5歳という若年型症例が次々と報告。社会のちょっとした対応の変化が医療に影響する。
次に農業の話。Rowan Jacobsen「ハチはなぜ大量死したのか(Fruitless Fall)」を紹介。2007年春までに北半球から四分の一のハチが消えた。何が原因か科学的に検証してゆくが、その結末は?
授業の後半は、ナラティブの話。6つのNarrative要素:Six “C”を紹介。
はじめてぶっ続けで3コマの授業をしたが、声が嗄れ、腰が痛くなった。
今回の授業は北海道大学で2年生に行った授業とほぼ同じである。詳細については、2010年5月10日、5月24日の本HPに記載したので、興味のある方は是非そちらを参照していただきたい。(山本和利)
第6回ニポポ指導者養成講習会
9月4,5日、第6回ニポポ指導者養成講習会を企画し運営を行った。受講者は16名(3グループ)。タスクフォースは7時に集合して打ち合わせ。8時開始。責任者として山本和利の挨拶後、偏愛マップを用いたアイス・ブレーキングで和んでもらった。最初は江別市立病院の阿部昌彦先生から「臨床研修制度の現状と問題点」のWS。ここ3年、北海道の研修医数は少しずつ減少傾向と報告。各施設の現状紹介後、KJ法で各グループから対策を出し合ってもらった。
続いて勤医協中央病院の尾形和泰医師の「学習のプロセス」のWS。あまり理論的な面を強調せず、研修医教育に必要な概念をコンパクトに講義してくれた。特にRUMBAを強調(real, understandable, measurable, behavioral, achievable)。
午前の最後は北大病院の宮田靖志医師の「プロフェッショナリズムの教育」のWS。その必要性を強調。SEA(significant event analysis)を参加者に書いてもらい、グループで共有した。最後に製薬会社との関わりについて触れた(便宜提供の関係を断つ)。
昼食前に全体の集合写真撮影。
昼食後、松前町立松前病院八木田一雄医師主導による「上手なフィードバックをしよう」は、はじめに実情と理論を講義。(アンケートによると、指導医は60%の研修医に問題を感じており、研修医は80%の指導医に不満を感じている)。3人一組でのロールプレイは研修医役、指導医役、評価者役をそれぞれ1回ずつ(緊張しやすく技術が未熟な研修医、当直明けで眠気を堪えて外来研修を受ける研修医、問題をあちこちで起こすのに自信満々の研修医の3シナリオ)。60分間、皆さん役になりきって熱演していた。
勤医協中央病院佐藤健太医師の主導で「SNAPPS法:研修医のレベルを5分で診断」のWS。RIMEモデルを解説(Reporter, Interpreter, Manager, Educator)。研修医のレベルをreporterからinterpreterに成長させる。SNAPPS法とは、Summarize H & P(3分で発表), Narrow the differential(3つのい絞る), Analyze the differential(根拠を比較する), Probe the uncertainties(不明点を質問する), Plan management(プランを検討する), Select case-related self-study(宿題を決める)、の6段階で指導するやり方である(6分間で終える)。新型インフルエンザ大流行時、1歳女児、発熱というシナリオを3人一組でロールプレイ。
札幌医大の寺田豊医師の主導で「地域診断を利用した地域医療研修教育」のWS。持続可能な臨床教育が重要。その地域診断ツールを9つ紹介(0. Community on foot, 1.Social mapping, 2. Genogram, 3. Community Organization Chart, 4. Local Health Systems, 5. Community Calendar, 6. Local History, 7. Life Stories, 8. Photo Voice.)。最後に地域医療研修の1カ月カリキュラムを、松前・富良野等特定地域を想定して作成してもらった。
夕食前に北海道庁鈴木隆浩主幹の「北海道の地域医療の現状と臨床研修」という講義を頂いた後。情報交換会。
2日目。勤医協中央病院の尾形和泰医師の「卒後臨床研修評価」のWS。臨床研修に関する書類が配布され解説が行われた。
続けて勤医協中央病院臺野巧医師の主導で「実践的な教育の評価」は、3シナリオを準備していずれか1つのシナリオに沿ってロールプレイを行った。最初に初期研修医評価のための指導医会議(指導医2名、看護師長1名、看護主任1名、ソーシャルワーカー役1名)を模擬体験した。ACGMEで開発されたモデルに基づいて6項目について評価をしてもらった(患者ケア、医学知識、診療に基づいた学習と改善、コミュニケーション技術、プロフェッショナリズム、システムに応じた医療)。
札幌医大の寺田豊医師の主導で「ティーチング・パールを共有しよう」のWS。参加者各自が得意ネタで10分間講義をそのやり方へのフィードバックを行った。
最後に総括として、参加者の感想をもらい、終了証を手渡して解散となった。
参加者のほとんどが満足し、明日から実践したいという意見が多かった。タスクフォースのまとまりも強化される。年に1度は開催してゆきたい。(山本和利)
続いて勤医協中央病院の尾形和泰医師の「学習のプロセス」のWS。あまり理論的な面を強調せず、研修医教育に必要な概念をコンパクトに講義してくれた。特にRUMBAを強調(real, understandable, measurable, behavioral, achievable)。
午前の最後は北大病院の宮田靖志医師の「プロフェッショナリズムの教育」のWS。その必要性を強調。SEA(significant event analysis)を参加者に書いてもらい、グループで共有した。最後に製薬会社との関わりについて触れた(便宜提供の関係を断つ)。
昼食前に全体の集合写真撮影。
昼食後、松前町立松前病院八木田一雄医師主導による「上手なフィードバックをしよう」は、はじめに実情と理論を講義。(アンケートによると、指導医は60%の研修医に問題を感じており、研修医は80%の指導医に不満を感じている)。3人一組でのロールプレイは研修医役、指導医役、評価者役をそれぞれ1回ずつ(緊張しやすく技術が未熟な研修医、当直明けで眠気を堪えて外来研修を受ける研修医、問題をあちこちで起こすのに自信満々の研修医の3シナリオ)。60分間、皆さん役になりきって熱演していた。
勤医協中央病院佐藤健太医師の主導で「SNAPPS法:研修医のレベルを5分で診断」のWS。RIMEモデルを解説(Reporter, Interpreter, Manager, Educator)。研修医のレベルをreporterからinterpreterに成長させる。SNAPPS法とは、Summarize H & P(3分で発表), Narrow the differential(3つのい絞る), Analyze the differential(根拠を比較する), Probe the uncertainties(不明点を質問する), Plan management(プランを検討する), Select case-related self-study(宿題を決める)、の6段階で指導するやり方である(6分間で終える)。新型インフルエンザ大流行時、1歳女児、発熱というシナリオを3人一組でロールプレイ。
札幌医大の寺田豊医師の主導で「地域診断を利用した地域医療研修教育」のWS。持続可能な臨床教育が重要。その地域診断ツールを9つ紹介(0. Community on foot, 1.Social mapping, 2. Genogram, 3. Community Organization Chart, 4. Local Health Systems, 5. Community Calendar, 6. Local History, 7. Life Stories, 8. Photo Voice.)。最後に地域医療研修の1カ月カリキュラムを、松前・富良野等特定地域を想定して作成してもらった。
夕食前に北海道庁鈴木隆浩主幹の「北海道の地域医療の現状と臨床研修」という講義を頂いた後。情報交換会。
2日目。勤医協中央病院の尾形和泰医師の「卒後臨床研修評価」のWS。臨床研修に関する書類が配布され解説が行われた。
続けて勤医協中央病院臺野巧医師の主導で「実践的な教育の評価」は、3シナリオを準備していずれか1つのシナリオに沿ってロールプレイを行った。最初に初期研修医評価のための指導医会議(指導医2名、看護師長1名、看護主任1名、ソーシャルワーカー役1名)を模擬体験した。ACGMEで開発されたモデルに基づいて6項目について評価をしてもらった(患者ケア、医学知識、診療に基づいた学習と改善、コミュニケーション技術、プロフェッショナリズム、システムに応じた医療)。
札幌医大の寺田豊医師の主導で「ティーチング・パールを共有しよう」のWS。参加者各自が得意ネタで10分間講義をそのやり方へのフィードバックを行った。
最後に総括として、参加者の感想をもらい、終了証を手渡して解散となった。
参加者のほとんどが満足し、明日から実践したいという意見が多かった。タスクフォースのまとまりも強化される。年に1度は開催してゆきたい。(山本和利)
2010年9月2日木曜日
アフガンとの約束
『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』(中村哲著:岩波書店 2010年)を読んでみた。聞き手澤地久枝さんが中村氏の活動に共鳴し、2008年8月11日にやっと捕まえて実現した対談集である。
アフガンとの出会いは、志半ばで倒れた友人と昆虫好きがこうじて「運命、さだめ」であったと答えている。赴任時の目標は、山村部無医地区の診療モデルの確立、ハンセン氏病の根絶を柱に、貧困層を対象にした診療とある。本書を読んではじめて、中村氏が火野葦平(『花と龍』の著者)の甥で、父親は大正期の社会主義者であると知った。精神神経科専攻ということも知らなかった。内村鑑三の『後世への最大遺物』を今も後輩に勧めているという。
家族と一緒にアフガンに赴任したり、10歳の息子さんを亡くしたりと辛苦をなめている。
アフガンと関わる中で「10の診療所よりも1つの水路を」と方略を転換し、道具も聴診器を起重機に代えてゆく。水さえあればアフガンは変わるという信念が荒廃した大地を緑豊かに農耕地に変えてゆき、住民が戻ってくる。女の人の水くみの重労働が軽減される。
おひさまと一緒に起きて、働けるときまで働いて、明日の予定を立てて8時ころには寝る。現地にいると心安らか、という言葉に、今の自身自身を重ね合わせて、言葉も出ない。
『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』という言葉が、本書を読むと胸に突き刺さる。
私にとっての運命、さだめは何なのか、模索が続く。(山本和利)
アフガンとの出会いは、志半ばで倒れた友人と昆虫好きがこうじて「運命、さだめ」であったと答えている。赴任時の目標は、山村部無医地区の診療モデルの確立、ハンセン氏病の根絶を柱に、貧困層を対象にした診療とある。本書を読んではじめて、中村氏が火野葦平(『花と龍』の著者)の甥で、父親は大正期の社会主義者であると知った。精神神経科専攻ということも知らなかった。内村鑑三の『後世への最大遺物』を今も後輩に勧めているという。
家族と一緒にアフガンに赴任したり、10歳の息子さんを亡くしたりと辛苦をなめている。
アフガンと関わる中で「10の診療所よりも1つの水路を」と方略を転換し、道具も聴診器を起重機に代えてゆく。水さえあればアフガンは変わるという信念が荒廃した大地を緑豊かに農耕地に変えてゆき、住民が戻ってくる。女の人の水くみの重労働が軽減される。
おひさまと一緒に起きて、働けるときまで働いて、明日の予定を立てて8時ころには寝る。現地にいると心安らか、という言葉に、今の自身自身を重ね合わせて、言葉も出ない。
『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』という言葉が、本書を読むと胸に突き刺さる。
私にとっての運命、さだめは何なのか、模索が続く。(山本和利)
2010年9月1日水曜日
advanced OSCE brush-up会議
8月31日、「2010年度 advanced OSCE Brush-up会議」が開かれた。臨床各科の委員25名が参加し、9月25日のadvanced OSCEに向けて問題を洗練した。advanced OSCEは4課題で1課題15分である。課題の作成、評価票、評価マニュアル、患者背景資料等、作成者にあっては多大な労力を要する。毎年、内容がversion upされて、精錬されたものになりつつある。この場を借りて感謝したい。
これから評価者講習会、模擬患者講習会、会場設営等、準備がまだまだ続く。今後、OSCE外部評価者の資格を持つ教官数も増やさなければならない。学内においてOSCEの重要性も徐々にではあるが認知されつつある。全学あげて取り組んでゆきたい。(山本和利)
これから評価者講習会、模擬患者講習会、会場設営等、準備がまだまだ続く。今後、OSCE外部評価者の資格を持つ教官数も増やさなければならない。学内においてOSCEの重要性も徐々にではあるが認知されつつある。全学あげて取り組んでゆきたい。(山本和利)
地域医療支援対策会議
8月31日、「2010年度第1回札幌医科大学地域医療支援会議」に山本和利が地域医療支援センター副センター長として参加した。委員長に島本和明学長が、委員として黒木医学部長、塚本病院長、野村事務局長、長瀬北海道医師会長等が参加されている。2009年度、2010年度の医師派遣実績が報告された。
会の中で、北海道の病院診療機能を維持するためには330名の医師の不足であるという報告がなされた。丘珠空港の運行縮小も地域医療支援に支障をきたす等の議論も出た。北海道だけでの判断は難しいが、地域医療を支援するためにはこれまでのように医師個人の希望だけを尊重するだけではなく組織だった対策を練る必要があるという意見でまとまった。
(山本和利)
会の中で、北海道の病院診療機能を維持するためには330名の医師の不足であるという報告がなされた。丘珠空港の運行縮小も地域医療支援に支障をきたす等の議論も出た。北海道だけでの判断は難しいが、地域医療を支援するためにはこれまでのように医師個人の希望だけを尊重するだけではなく組織だった対策を練る必要があるという意見でまとまった。
(山本和利)
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