札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2014年9月12日金曜日

指導医養成講習会


9月67日、第10回北海道プライマリ・ケアネットワーク 臨床研修指導医養成講習会を企画し、チーフタスクフォースとして参加した。当日、ACU会場で715から打ち合わせ。受講者は22名。

 

まず山本和利の挨拶、タスクフォース紹介後、山本和利のリードで「アイスブレイキング」。偏愛マップを使って、雰囲気を和らげた。

 

続いて勤医協札幌病院の尾形和康氏の主導で「カリキュラム・プランニング」を120分。従来型カリキュラムのミニレクチャー。学習プロセスの解説。教育目標の分類(知識、態度、技能)とそのレベルの説明(知識:想起→解釈→問題解決、態度:受け入れ→反応→内面化、技能:模倣→コントロール→自動化)。一般目標(GIO)と個別目標(SBOs)の関係を説明。SBOsをすべて達成すればGIOを達成することができる。CVカテーテルの挿入」等の課題を各グループで演習。教育目標はただ作ればよいわけではない(RUMBA:real, understandable, measurable, behavioral, achievable)。教育目標はスマートに(SMART:specific, measurable, achievable, relevant, time-bound)。学習方略の解説。学習成果は、人に教えると90%、講義を受けると5%が身につく。学習方略を選択するときの選択の仕方。順序、方法、組み合わせ、場所、道具、時間、経費等を考慮する。評価の解説。「学習者は自分がどのように評価されるかによって学習態度を変える」すなわち、評価は人をつくる。研修分野別マトリックス表を使ってグループ作業。普段指導している科に研修医が回ってきたという設定で、指導医、研修医役に分かれて、ロールプレイ。指導医が背景、研修できる内容を説明する。その後、研修医は過剰な希望を述べる。指導医はRUMBA,SMARTを意識して、研修医の希望をお互いが納得できる最終的な研修目標に修正する。

 

江別市立病院の日下勝博氏の主導で「上手なフィードバックをしよう」のセッション。指導医としてフィードバックにおいて悩ましいと感じかことをグループ討議。自己分析能力の高い研修医、生真面目だが気づきの少ない研修医、能力以上に自己評価が高い研修医という3シナリオを用いたロールプレイを行った。3人一組でのロールプレイは研修医役、指導医役、評価者役をそれぞれ1回ずつ(緊張しやすく技術が未熟な研修医、当直明けで眠気を堪えて外来研修を受ける研修医、問題をあちこちで起こすのに自信満々の研修医の3シナリオ)。ここでは指導医としての質を上げることが目的なので、指導医役には、シナリオに沿った役つくりよりも、研修医への最良のフィードバックを実践するという前提で指導を行った。

 

第一日の午前の日程を終了したところで、写真撮影となった。

 

昼食後、余市協会病院の森博威氏の主導で「ヒアリハット・カンファランス」セッションを行った。はじめに成人教育理論についてのミニ講義。人は何から学ぶか?先輩の背中、プロジェクトに参加して、挫折から、という意見がある。チーム医療の強化、医療安全。人間の信頼性は、思ったよりずっと低い。個人へのエラー防止効果は低い。組織的に対応しなければならないが、診断プロセスは医師が責任をもってやらなければいけない。思考だけでなく感情のプロセスも重要となる。省察的実践家である必要がある。Significant event analysisを用いる方法を紹介。よくある病気を選ぶことが大切。鑑別診断に入っていなかった事例。診断がつきにくかった事例。見逃して悔やまれる事例。当時の記録をそのまま再現する。判明した順番に発表する。自分お気持ちも発表する。クリニカル・パールを必ず入れる。余市協会病院の背景を説明。その後、「呼吸困難、咳で受信した82歳男性」についてヒアリハット・カンファランス(研修医が振り返りをしながら向上してゆく)を研修医に実演してもらった。研修医はCOPDの急性増悪を考えた。腹部XPにてFree airなし。イレウス像なし。胸部CTにてブラあり。COPDの急性増悪として入院加療。順調であったが、7日目に38度の発熱。CRP:8.9,WBC;11,600。胸部Xpfree airを見逃していた。筋性防御あり。腹部CTS状結腸穿孔と判断され手術となる。クリニカル・パール「ステロイドが消化管穿孔を誘発した」「腸管穿孔では腹部症状にくい」

第2例目。「発熱、食欲不振で入院した脳梗塞後の85歳男性」。はっきりした所見なし。気管支炎として対応。内臓破裂の手術(脾臓摘出)CRP;11.7WBC;8,700. 抗菌薬で加療。培養依頼。腹部XPでガスが多い。麻痺性イレウスか。筋性防御出現。虫垂炎を起点としたイレウスであった。クリニカル・パール。「症状を訴えにくい患者では病歴と身体所見の信頼性が低い。」「麻痺性イレウスでは積極的な検索が重要である」

最後に医療安全についての意見交換が行われた。

 

 

続けて、むかわ町穂別診療所の夏目俊彦氏の主導で「5マイクロスキルの実践」セッション。一番の問題は、研修医が考えて答える前に、指導医が答えを言ってしまうことである。今回お勧めのマイクロスキルは5段階を踏む(考えを述べさせる、根拠を述べさせる、一般論のミニ講義、できたことを褒める、間違えを正す)。外来患者シナリオ3つを用いて2人一組になってロールプレイ(シナリオの読み上げ)を行った。最後は、自分たちでシナリオを作成してもらい、いくつか自信作を発表してもらった。

 

続いて月寒クリニックの寺田豊氏に主導で「community-oriented Primary CareCOPC)を用いた地域医療の教え方(community-based medical education)」セッション。

まず、参加者がどんな地域研修を受けたが述べていただいた。病院の地域研修プログラムについて各グループで紹介してもらった。

ティーチングー・シナリオを用意する。母子家庭の事例を提示。母子家庭は釧路、旭川に多い。下痢や咽頭痛の患者さん事例から入るワークショップを紹介。

始めに、地域で困っている問題を挙げてもらい、ティーチングー・シナリオを作ってもらった。函館のイカによるアニサキス、釧路の昆布漁の合間の間食で肥満、出稼ぎが多い地区でのHIV感染症、都会での母子健康手帳のない家族、日高の馬外傷、帯広のトキソプラズマ感染症、仙台の胆石症、などがあがった。

地域を自分の目で知ろうという手法として「地域視診」、「フォトボイス(医師が写真を撮る)」「photo elicitation(住民が写真を撮る)」「ライフ・ストーリー」「360度評価(振り返り)」手法を紹介。

12の秘訣

  1. 全人的・包括的・継続的な医療を教える
  2. 地域の医療スタッフがロールモデル
  3. カルチャーショックを振り返りにつなげる。
  4. カリキュラムを与える。
  5. 学ぶ時間を確保する。
  6. サポート・ガイダンス、カウンセリングをしっかり行う。
  7. ポートフォリオを利用した評価を行う。
  8. 実習教材の工夫をする。
  9. 体験から学ぶ。
  10. 地域医療スタッフから生部。
  11. 社会的な役割を学ぶ
  12. 地域との関わり合いを強化する。
    これらについて具体的な事例をあげながら進められた。
     地域医療の魅力を伝える地域保健・医療研修プログラム(1週間)を作る作業を行った(仙台、函館、新潟、福岡)。このセッションでは新しい用語が一杯でてきたが抵抗なく、活発に話し合いが行われた。。
     
    「北海道における地域医療の現状と道の取り組みについて」と題したセッションで北海道保健福祉部の石井安彦参事が講演された。今回は、北海道の医師不足を強調された。指導医の役割も強調。高齢医師が増えているが、若い医師は減少している。女性医師が増えている。地域偏在の話。札幌圏内に集中。北海道の取り組みを紹介。「地域医療再生計画」を紹介。道内の研修医の実態に加えて、専門医制度についての最近の動向が示された。都市部の定員は減らしている。北海道は空定員が多い。3年間の研修医は56.3%北海道に残っている。研修後、小児科、産婦人科は志望者が研修後低下している。研修医は指導体制を重視して選択している。
    そのまま夕食を摂り、情報交換会に移行。
     
    二日目、松前町立松前病院の八木田一雄氏が「地域包括医療case study」セッションを行った。超高齢者社会、高齢者医療、高齢者介護、介護保険制度についてミニ講義(スライド120枚)が行われた。その後、該当患者とその家族の生活全般の解決すべきニーズをあげてもらい、課題を基にケアプランを作成する作業をおこなった。それを発表してもらった。
     
    勤医協中央病院臺野巧氏主導での「研修医評価」をグループワーク救急の知識・態度を身につける」で、それに対する、個別目標を作成する作業をおこなった。次に、その現実的な評価方を考えてもらった。評価方法として、目標に合わせた評価方法を選択する必要がある。自施設で行っている360度評価を紹介された。自己省察の大切さを強調された。SMARTを紹介(Specific, Measurable, Achievable, Behavioral, Achievable)。単独で当直ができるかどうか判断するために行っている技能を観察する評価法のMini-CEXを紹介。
    目標を研修医と相談して設定することで、研修医の満足度が向上した。
     
    江別市立病院の阿部昌彦氏の主導で参加者各自が得意ネタで10分間講義を白板で行い、その講義のやり方に対してフィードバックをしてもらった。テーマは、大腿骨頚部骨折。中心性頚髄損傷、ヘリコバクター・ピロリ菌感染、ゴリラの話、高齢入院患者の家族への説明、乳がん、原発性副甲状腺機能亢進症、褥瘡の診方、小児の感染症と抗菌薬、急性大動脈乖離、生活習慣病、喫煙の害、について、マウス敗血症、地域枠卒業生について、麻酔について、前置胎盤、正しい排便の仕方、小児の成長、胃癌、起座呼吸、鼻異物、等であった。和気藹々とした雰囲気で講義は進んだ。最後にRIME modelを紹介した。
     
     
    総括として、参加者に感想をもらい、受講者代表に終了証を手渡して解散となった。教育に対するモチベーションが上がったという意見が出された。来年度、さらにブラッシュアップして望みたい。(山本和利)