のシンポジウムに参加した。
筑波大学の前野哲博教授の「臨床実習を通じて形成される大学病院と地域の互恵関係」という講演を拝聴した。
□地域医療(community-based
medicine)で活躍できる医師とは?
大きな病院には患者が選んで受診するが、町にはいろいろな疾患を抱えた住民がいる。様々な健康問題が発生する。「私たちが病気になったら診てもらえますか?」に応える。
■common problemに適切に対応できること
・頻度の高いものはメネジメントまで
・頻度の低いもの・緊急度のたかいものは、早期発見、初期対応、コンサルテーション
・これをもれなくカバーすること
■予防医学、社会背景、地域包括医療にも適切に対応できること
□地域医療教育の現状と課題
・地域枠医学生の増加、68大学が採用。1349名の学生が地域枠。(7名に1人)国の政策である。
・総合診療専門医のあり方。地域で活躍する医師のキャリアになる。「地域を診る医師」の視点が重要である。地域のニーズを基盤とする。
□大学・地域循環型の地域医療教育システムの構築
■大学病院がなぜ地域医療教育に向かないのか?
・特定機能病院である。(三次病院で、金になる人を求める):気軽に行き成りかかってはいけない。日常疾患でかかってはいけない。(基本的に)遠い。
・DPCである:治療方針を決めてから入院。クリツカル・パスに則って動く。初学者には向かない。
■病棟中心の臨床教育
・診断が既に着いている
・治療目的で入院している:生活から切り離されている。
・疾患が偏っている
・いつでも医療者の目が届く:家庭医での対応の仕方が判断できない。患者教育ができない。
■地域を含めた教育フィールドの確保が必要
・診療所に医師を派遣する、そこで屋根瓦方式の教育ができる。診療所長を臨床教授にする。4カ所。宿泊施設がある。
水戸共同病院:立地条件はよいが、倒れかけていた病院。筑波大学の教員がそこで働く。内科医は総合診療科に所属。人材育成・教育の拠点となる。この方式が広がって、このような形の大学教員が51名いる。
大学と地域病院の長所と短所を補い合う。
■大学と連携した地域医療循環システム
コンソーシアム、安定した雇用形態、良好な勤務環境、大学によるキャリア保証が必要となる。地域医療と医師のキャリアパスの両立が難しい。
□筑波大学の事例紹介
プログラム:
1年生で早期体験実習
2年生で在宅ケアカンファランス
3年生で地域ヘルスプロモーション、チームワーク演習
5年生で地域クリニカル・クラークシップ
・病院実習6週間、診療所実習1週間、地域医療実習1週間
□地域医療教育の充実にむけて
・大学・地域医療機関・行政・住民と医師を共有すること
・医師を集める最大のパワーは教育である。
・人を集めるには、明らかに頭一つ抜け出していること
・オーバーペースは失敗の元。
・成功する条件
・大学が「のれん分け」できる環境を整えること
・大学教員として全国公募できる環境を作ること
・処遇の問題:給料、兼業
この後、パネル討論
市立釧路市立病院高平真院長、留萌市立病院笹川裕院長、松前町立松前病院木村眞司院長。実習について各病院5分間プレゼンテーション。
Q;各病院での学生の役割。参加型にするには、リスクを負う。役割を教えることが大事。信じて任すことが大事。
Q:サテライト実習プラン。各地の実情に合わせて、診療所や多職種との連携を図ってゆきたい。別の職種の視点で医師を見ることが重要であろう。医学を勉強するところではない。そこでできる目標を決める。
筑波大学は大学が一体となって地域医療教育に関わっていることがわかる講演であった。札幌医大も負けずに頑張らねば!(山本和利)