ある研修医の経験症例。整形外科・形成外科で研修中。外来研修の症例について振り返り。
研修医から振り返り1題。
50歳男性。咽頭痛、腹痛で始まり、風邪にかかったと思っていた。その後、胸骨の裏側へと移動する背部痛になる。36.5℃、背部痛から、大動脈乖離、虚血性歯疾患を否定するため、両側の血圧を測定し、造影CTを撮影。Marfan症候群のような所見なし。解離性大動脈瘤が判明。専門医のいる病院に紹介した。
大動脈瘤について振り返った。分類。予後不良で致死率は1-2%。
クリニカル・パール:移動する激しい胸背部痛など大動脈乖離を疑った場合には、速やかに造影CTを行う。大動脈乖離は多彩な症状を呈する。突然発症の病歴が大切(問いかける力)。大動脈弓の乖離は、あご、頸の痛みのことがある。
研修終了生からの報告。
介護型療養型老人施設+クリニックの紹介。慢性期の医療。感染症治療、ターミナルケア。看取り、湿布のついでに降圧剤、風邪、点滴を希望。
困っていること:遠方の専門医からもらった薬の処方依頼、調剤薬局からの余計なアドバイス(影響力が強い)。接骨医からのレントゲン依頼。中途半端な外傷患者への固定処置。
認知症患者に対する抗凝固療法
80歳代男性。心房細動、慢性心不全、COPD,認知症、難聴、中肉中背。訪問診療中。ADLは部分介助。時に尿失禁。ワーファリン2.25mg/日でPT-INR;1.49-3.2
どこまで治療すべきか?
調べたこと:CHADS2 スコアが 0点なら抗凝固療法はしない。80歳以上の患者。高齢者でも転倒しないような工夫をすれば、ワーファリンは使用できる。医学的適応はあるが、社会的適応があるかどうか判断が難しい。
原因不明の腎不全
70歳代女性。統合失調症で服薬を続けている。高血圧の既往。最近、口内アフターがあり、バルトレックスを処方された。歩行がおかしい。Cre:6,BUN:50,UA:10, 尿所見は乏しい。電解質:正常範囲。両側腎はやや腫大。軽度のシドーシス。ESR:20/h, ANCA(-),3日間血液透析を行ったら、劇的に改善した。原因は薬剤か?
今回から、経験した症例を即、コンピュータで調べながら科学的根拠に迫り、クリニカル・ジャズをする模索を始めた。(山本和利)