『医者は現場でどう考えるか』(ジェローム・グループマン著、石風社、2011年)を読んでみた。4年前に原書で読んだが、翻訳がでたので再読した。
著者はハーバード大学医学部教授。New Engl J Medのエディター。
医師が臨床医としてどのように考えるべきかを明確に教わっていない、と著者は主張する。EBMが急速に広まったが、医師が数字だけに頼って受動的に治療法を選択する危険を懸念する。医学は不確実な科学である。以上の点を踏まえて、一般の読者向けに書かれた本である。
はじめに紹介される患者さんは大変印象的である。15年間、医師の助言に従って食べ続けたが痩せ細った体重が増えない女性である。解決は「患者の言葉をよく聴けば患者が診断そのものを教えてくれる」から導かれた。
本書では、誤診につながりかねない認識エラーについて詳述されている。
自分自身が手を痛めて、複数の医師にかかった経験をもとに導き出された結論、「医師は自分の見たいものしかみない」という言葉が印象深い(私自身も講演でよく引用させていただいている)。
米国の医師と製薬・医療機器会社の癒着についても鋭く批判している。
医療の知識を増やす本ではないが、医師の思考がどのような傾向を持つかを知る上で、非常に参考になる本である。(山本和利)