『プリズム』(百田尚樹著、幻冬舎、2011年)を読んでみた。
本の帯の文句がすごい。哀しくミステリアスな恋愛小説。失恋でも、破局でも、死別でもない。かつて誰もが経験したことのない永遠の別れ。
解離性障害、多重人格を扱った小説である。多重人格の書物としてはD・ルイスが『24人のビリー・ミリガン』『ビリー・ミリガンと23の棺』が有名である。著者は末尾に25の参考文献を挙げているので、かなり勉強したものと思われる。
米国では1980年以後に患者が急増しているという。しかしながらその疾患自体を認めない者もいるようだ。もし存在するのだとしたら、総合診療医として診療をしていれば、慢性疼痛や転換性障害の患者さんに紛れて解離性障害の患者さんを見逃しているかもしれない。
狐に抓まれたような気持ちにさせられる小説である(本書では、狐がつくのも、解離性障害ではないかと述べているが・・・)。(山本和利)