札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年11月29日金曜日

地域/へき地での日常疾患



木村眞司先生

 まずは自己紹介。

松前の紹介。100床。へき地医療をしたかった。ジェネラリストを志す人を増やし、育成すること。我が国の医療レベルの向上。

 

本が読みたい。鳥を見たい。鳥の写真を出して、名前を当てる。「ニュウナイスズメ」「イエスズメ」

 

76歳男性。「お腹がごろごろする。疲れる。ふらふらする。具合いが悪い」「あるとあらゆる検査をしたが異常がない」→「うつ病」

Common things are common.

 35歳女性。「息苦しい、人混みが怖い」→「パニック障害」

身体と精神はつながっている。

 52歳女性。「右の人差指のPIP関節が痛いんです」→「リウマチ」「変形性関節症」

PIP関節はどちらの疾患も痛む。

 13歳男児。「膝が出っ歯て痛む」→「Osgood-Schlatter 病」

 5歳女性。「1週間前から足が腫れるんです」→「うっ血性心不全、腎不全、肝硬変、静脈のうっ滞、薬の副作用」

 69歳女性。「足が攣るんです。漢方薬を下さい。」→「運動、アルコール摂取による脱水」「カルシウム拮抗薬服薬」

 35歳女性。「毎日頭が痛いんです」→「緊張性頭痛」「薬剤誘発性頭痛」「片頭痛」

 

80歳女性。「義歯。口や舌が痛む。白苔あり。」→「口腔内カンジダ症」

 33歳女性。「頭が痛くて時々寝込む。吐くこともあります」→「片頭痛」

 

60歳男性。「この1か月、咳とくしゃみが続くんです」→「アレルギー性鼻炎(後鼻漏)」

68歳男性。「最近鼻血が出るんです」→「アレルギー性鼻炎」

 
54歳女性。「どこも具合が悪くはないが、痩せてきた」→「糖尿病」「甲状腺機能低下症」「がん」

 
60歳男性。夜間10時に受診。「1時間前からすごくみずおちが痛いんです」→「胆嚢炎、胆石発作」も鑑別診断に入れる。

 

28歳女性。「2,3年前から味がわからないんです」→「アレルギー性鼻炎」

 

58歳男性。「ラーメン食べると鼻水が出るんです」→「血管運動性鼻炎」

 

17歳女性。「交通事故の2日後。ベッドから起き上がったらくるくる回るんです」→「DPPV」

 

85歳男性。「最近よく転ぶんです」→「パーキンソン病」

 

65歳男性。「親指の付け根が痛む」→「変形性関節症」

 

38歳女性。「肘の外側が痛む」→「テニス肘(外側上か炎)」

 

59歳女性「朝起きたら眼が赤い」→「結膜下出血」

 

80歳女性。「乳の下がただれる」→「カンジダ間擦疹」

 

77歳女性。「ときどきドキドキするんです」→「不整脈」「不安神経症」「パニック発作」

 

患者さんは病名をもって病院に来ない。こういうよくある健康問題に対処できるようになりたいものです。

 

院内実習の紹介。院外活動の紹介。

松前病院に暗雲が・・・

「職員の退職人事で、町との話し合いが決裂した」・・・・・道庁の仲裁・・・覚書を交わしたが履行されない・・・議会が否決・・・病院決済が認められない・・・退職願提出・・・

「病院を守る会設立」・・・

背景にはGreed(欲望)、Hunger for power(支配欲)、Jealousy(妬み)がある。

Ignorance(無知)もある。

 

(もし解決したら)松前で待っています、という言葉で締めくくった(山本和利)

 

 

 

 

 

 

 

 

2013年11月22日金曜日

11月の三水会



11月20日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。松浦武志助教が司会進行。後期研修医:1名。他:6名。

 

ある研修医の経験症例。うつの既往と慢性的な全身の疼痛の93歳女性。SSRIを処方し経過観察。移動する発疹に抗ヒスタミン剤を処方。15時間まえから胸部絞扼感。ECG他で異常なし。腹部全体の痛み。虫垂炎を疑い精査したが、憩室炎であった。脳室腹腔シャントのある29歳女性の発熱。腹膜炎を疑い、転送。DMのコントロールが不良の女性。インスリンの打ち方を変えて、HbA1cが改善した。検診で指摘された鉄欠乏性貧血に、精査をして鉄剤を開始。発熱と膿尿に対して腎盂炎として加療。病院恐怖症の統合失調患者の喘息発作が悪化した。蕁麻疹にステロイドを処方した。(本当に必要か?)

在宅症例:慢性頭痛にトリプタノールを処方。頭痛は軽快したが、口渇感が出現。認知症、タール便。重度の認知症。肝硬変、DM,心臓細動、認知症に対して訪問介護士と連携。BUN/クレアチニンの上昇で消化管出血を疑った。点滴療法をするかどうか家人と話し合い。

 

研修医から振り返り1題。

 「水を飲んだだけでも血糖値が上がるんです」という高齢糖尿病患者。独居、抑うつ状態。24回の入院歴。HbA1c:11-13%。入院中に低血糖になることあり。家は「ゴミ屋敷」状態。水道が壊れている。虚血性心疾患あり、最小血管障害あり。糖尿病の家族歴あり、夫の暴力が原因で離婚し子供とは音信不通。143㎝、64.4kg。

多職種カンファレンスを開催。「3食食べていなくても翌朝の血糖値が400mg/dlとなる。」「医師のいう通りにしてもよくならない」という思いがある。

Somato-psycho-socio-semiotic model(by Sturnberg J)で考えてみた。4つのバランスが重要である。それにそって対応し、関係性がよくなった。

一日中眠くて、インスリン自己注射を忘れる。睡眠時無呼吸症候群と診断され、C-PAPを開始。傾聴を続けた。

(C-PAPで血糖値を改善するという報告もある)

 

クリニカル・パール:ナラティブ・アプローチとSomato-psycho-socio-semiotic modelは慢性疾患管理に有力な手法となる。

 

研修修了者の報告

無床診療所で活躍。文化の違う医療機関との連携の仕方をすり合わせる必要がある。糖尿病の生活、療養指導がされないまま退院してしまうケースなど、問題もある。知的障害のある患者と病院スタッフとで折り合いが合わず、検査せずに帰宅。その後、末期がんが判明。

温泉旅館の高齢患者の切り傷への対応を報告。

 

今回は新しい手法で、慢性期ケアについての重要さを発表してくれた。(山本和利)

 

北海道の地域医療


11月15日、幌加内町国民健康保険病院の森崎龍郎先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「北海道のへき地医療 幌加内での医療と生活」である。

 

まず、自己紹介をされた。横浜生まれ。富山医科薬科大学卒。漢方医。2010年幌加内町国民健康保険病院に赴任。幌加内町の紹介。3つの日本一。そばの作付面積、日本最大の人造湖(朱鞠内湖:ワカサギ釣りができる)、最寒記録-41.2℃(霧氷が見える,雪も多い)。人口1,650人、世帯数844(町として最小数、人口密度が最低)。過疎の町で高齢者が多い(高齢化率35%)。小学校3年生は8名で全員女子。病院の紹介。町内唯一の医療機関。医療療養13床、介護療養29床。建て替えの予定は宙に浮いている。平均入院患者28.6名。平均外来患者数31.3名。常勤医師1名、非常勤医師1名、職員数32名。

 

日々の診療。外来:超音波、内視鏡検査。訪問診療。入院;回診、病棟業務。病棟管理。予防医学。保健福祉医療連携。産業医。

 

入院病棟:在宅生活が困難な方。脊椎損傷の方。認知症の方。脳卒中後遺症による胃瘻造設者。末期がん患者。骨折、火傷の方。

外来診療:高血圧、糖尿病、高脂血症。OA.認知症など。慢性疾患が複数組み合わさった患者が多い。それに急性疾患が加わる。事例を提示。

上気道炎、下痢、小児の肺炎(マイコプラズマ肺炎)。60歳代女性の右臀部痛→帯状疱疹。マダニ咬傷。ライム病。

 

当直:自宅待機である。2週に1件の救急車。事例提示。関節脱臼。大腿骨骨幹部骨折。結膜浮腫。アキレス腱断裂s(Simmons test)。

 

プライマリ・ケア医の役割

1.まずはすべてに対応する。

2.自分のできることをする。シンプルに。スーパードクターである必要はない。生涯学習をしようという姿勢が重要である。

 

道北ドクターヘリ事業:旭川日赤病院が基地。1年半で4回要請している(交通事故、脳卒中)。悪天候、夜間の対応が問題。

 

在宅医療:老々介護。認知症同士の介護。カバーする地域の範囲が広すぎる。冬期間の厳しさ(雪はねが大変)。介護スタッフ不足。

 

出張診療所;4つの診療所。公民館の一部を借りているところもある。

保健福祉総合センター(アルク):ディサービス、居住部門、老人福祉寮。地域ケア会議の紹介。

 

予防接種事業:未就学児の任意予防接種をすべて全額助成。中学生女子の子宮頚がんワクチン全額補助。インフルエンザワクチンは中学生無料、町民は千円、高齢者の肺炎球菌ワクチン助成。保育園健診。産業医活動(禁煙)。

 

ここで「地域医療とは?」いろいろなところで使われる。使う側、受け取る側で意味が違っていることが多い。

 

プライマリ・ケアの定義

 

事例。9歳男児。体にブツブツ。水痘。1週間後の運動会に参加できるか。ワクチンの緊急接種ができる。抗ウイルス薬で対応。自宅安静。登校停止。

 

半年後、父親が来院。40度の発熱、咳。肺炎を疑い胸部Xp,血液検査。XPで肺炎像あり、抗菌薬を処方。

 

83歳男性。検査実施したところ、大球性貧血、血小板減少が判明。専門医に紹介したところ、MDSであった。半年後、後ろ向きで倒れた。入院時、意識清明。てんかんを疑った。専門医で治療が開始された。幌加内で定期輸血を開始した。右第2,3指の壊死(喫煙中にてんかん発作を起こした。)

 

プライマリ・ケア医の役割

・日常診療に対応。

・こども、父親、家族も診ている。

・生活背景を知っている。

・アクセスしやすい。

・地域の健康にも関与。

 

・必要なときには専門医に任せる。

・各専門科の問題を統合して対応。

・これまでの経過を知っている。

・見知った医師がすべてを知っている

最後まで責任を持つ。

 

講義の途中に、幌加内そば打たん会、野菜作り、山菜取り、スキー、ワカサギ釣り等、田舎の生活の魅力を紹介してくれた。

 

医者も地域で暮らしている。

・地域の人が支えてくれる。

・こどもは地域に溶け込むきっかけになる。

・プライバシーがないが、守られている。

・お互いの気遣いがある。

・職住一致

 

3年半年経って感じること:患者さんの顔が見える。保健・福祉・救急の連携がスムース。旭川市が比較的近いので助かっている(高度医療・専門医のありがたみがよくわかる)。外傷が多い。人材不足(医師、看護師、介護士、ヘルパー、給食婦、等)。高齢者の生活(冬をどう過ごすか)。意外と子供が多い。いろいろなことに関わることができる。シンプルに、コンパクトに地域医療を経験することができる。若いうちに是非、経験を!

 

ホンワカとした雰囲気の中で家族と一緒に地域で暮らす楽しさを伝えてくれた。(山本和利)

2013年11月10日日曜日

慢性頭痛とメンタル


11月9日、第2回北海道身体疾患と不安抑うつ研究会で東邦大学橋詰勝敬准教授の講演を拝聴した。
 

頭痛の分類

・一次性      

 片頭痛:800万人

 緊張性頭痛:1600万人

・二次性

 

慢性頭痛の明確な定義がない。一次性頭痛と薬物乱用性頭痛が主。

心理的背景を有する患者は間違いなく多い。

心療内科では、慢性連日性頭痛、身体表現性障害、小児・思春期例、妄想、人格障害を依頼される。

 

20歳代女性。就職後に頭痛。混合型頭痛。最近、テレビが面白くない。本が読めない。不安が強い。→混合型頭痛うつ状態、社会不安障害、

治療はどうするか?SSRIかトリプタノールを使う。

 

20歳代女性。抑うつを伴う片頭痛。上司と不仲。不眠、食欲不振。

治療:デパケンR400mg,ジェイゾロフト、メイラックス。トリプタンの頓用。さらにストレスマネージメントを併用した。

 

抗うつ薬が痛みに効く効果

・疼痛閾値を上げる効果

・痛みの下行伝導を抑制

・オピエート様効果

・NMDA受容体を介した効果

 

片頭痛の共存症にどんなものがあるか。

うつ病の人は新規に片頭痛になりやすい(オッズ比9.3)

片頭痛のある人はうつ病になりやすい(オッズ比10.5)

 

頭痛には、うつ、不安、ストレスが絡んで慢性化、増悪につながる。

 

小田原幸臨床心理士の講義

頭痛の非薬物療法

・心理教育

 病態生理の説明、服薬指導、生活指導、頭痛日記(セルフモニタリング、増悪因子の同定、除去)

・認知療法

  ものの考え方、深層レベルから表層レベルまで「出来事に対する理解の仕方」
    認知モデル:状況→認知→行動、気分、身体に影響する
    目標:認知を修正に、問題解決に向かいやすい気分や志向、行動に近づける。
    コラム法(5つのコラムを使う:状況、不快な感情、自動思考、適応的思考、結果)、適応的思考をすることが難しい・・・そこで、客観視する、立場を変えてみる、違う心境で考える、時間の観点を変える、過去の体験を振り返る。

・リラクゼーション

      ・自律訓練法

      ・バイオフィードバック療法

       1960年から、生体情報をフィードバックする。皮膚温、筋電図。ゲーム感覚で楽しめる。子ども・思春期症例に使いやすい。精神疾患には向かない。

      ・漸進的筋弛緩法

       簡略化:1回5分で一日3回行う。
       腕、首・肩のリラクシゼーションの具体的な指導を受けた。

(山本和利)

将来の糖尿病治療展望

第47回日本糖尿病学会北海道地方海で中村昭伸先生の講演を拝聴した。

 

治療薬

インスリン抵抗性

インスリン分泌:進行する、β細胞量が低下する。(アポトーシスの亢進)

 

DPP4-I

β細胞量を増やす可能性がある。

併用可能。

体重を増やさない。

COMPASS研究:ピオグリタゾンよりDPP4Iは勝っていた(効果的、安全)

 

インスリンの回数を減らすことで、成績に差はないが、患者満足度が高い。

EXAMINE試験:短期間の研究のため、有意差なし。

SAVOR-TIMI53研究:有意差なし。

 

GLP-1

4種類の製剤あり。週に1回でよい製剤有り。

インスリンとの併用が可能である。(インスリンの注射回数を減らすことができそう)。

使用量の少ない患者ではインスリンからの切り替えもできそうである。

 

経口血糖降下薬

SLGT2阻害剤:腎からの尿糖の再吸収を減らし、血糖をさげる。体重減少作用あり。

GRP40作動薬:インスリン分泌を増やす。HbA1cを1%下げる。体重は増えない。低血糖は起きにくい。

グルコキナーゼ活性化薬:インクレチンを増やし、β細胞を増やす。短期効果はあったが、4か月以降に効果がなくなるため、開発中止となった。

(山本和利)

2013年11月8日金曜日

糖尿病診療における内分泌疾患の意義




第47回日本糖尿病学会北海道地方海で市立札幌病院の 和田典男先生の講演を拝聴した。

 

潜在性甲状腺機能低下症と糖尿病慢性合併症

脂質代謝の異常が問題とされたていた。

潜在性甲状腺機能低下症(TSH>4)が糖尿病慢性合併症のリスクとなる。

アジアではよく見られる。

腎症(微量アルブミン)のリスクはオッズ4.0

日本:オッズ3.5、網膜症も多い(ただし罹患年数、年齢に差がある)

ホルモンを補充したらよくなるか。糖尿病群だけではないが、腎保護作用がありそうだ。(ランダム化されていない)

抗TPO抗体による腎症の進行オッズ:6.0

推奨:糖尿病患者には甲状腺機能のスクリーニングすることを勧める。低下には補充が進められる。

 

原発性アルドステロン症

糖尿病患者の高血圧からPAの頻度:11%前後。ARBを内服していてもホルモンスクリーニング影響は少ない(偽陰性がやや増える)。

推奨:レニンとアルドステロンの測定を勧める。

 

糖尿病における潜在性クッシング症候群

頻度:1-3%

デキサメサゾン1mg抑制試験(日本は0.5mg)で診断、疑い例に終わっていることが多い。

推奨:一般医ではスクリーニングは推奨できない。

(山本和利)

 

地域医医療の実践のために


 

11月8日、地域医療総合医学講座の若林崇雄助教が講義を行った。

 

高校生に行ったOpen campusの内容を紹介。

江別市立病院での体験を紹介。330床。負のスパイラル(→患者の大病院志向→医師分布の偏在→大学の力の低下→医師の心理の変化→)pay forward(未来に投資)が大事。

地域連携包括ケアと総合診療医との関わり。

 

ポイント

1.「地域医療」は決して決して田舎だけを意味しない。

・そこで生活する地域住民のための生活支援活動である。

2.「地域医療」崩壊は医師と住民双方に理由があった。

3.「地域医療」には総合診療医がなじみやすい。

・大部分に対応、継続的に、総合的に

・臓器専門医:単一臓器

・綜合内科医:頻度の高い疾患

・家庭医:行動変容、健康増進

4.総合診療医と専門医は対立する概念ではない。

5.教育こそ人を集める手段である。

・see one, do one, teach one.

6.システムを整えることが重要

7.大局的視点から目標を持つ

8.地域医療はシステムである。

9.医師はリーダーになる。

・地域連携包括ケアと総合診療医との関わり。

・医療ケアと社会的ケア

・結果的にリーダーとなる。

10.地域医療は辛く苦しいものではない!!!

 

情熱的な講義であった。(山本和利)