『数学で読み解くあなたの一日』(ジェイソン・I・ブラウン著、早川書房、2010年)を読んでみた。
著者はカナダのダルハウジー大学理学部数学・統計学科の数学教授。音楽についても造詣が深い。
はじめに、ある整数が9で割り切れるかを調べる方法を解説している。整数論のひとつの紹介と言えよう。
グラフについて。折れ線グラフで傾向と変化量がわかる。最適な線を見つける方法は直線回帰と呼ばれる。円グラフは相対的な比較に優れているが、実際の数が隠れてしまう。最低値を0にしないといった、グラフを使って騙す方法も紹介されている。
統計について。平均と標準偏差、平均への回帰。P値を自慢することの無意味さ。相関するからといって、一方の要素が他方の要素の原因となっているということを意味しない。
統計的にリスクが非常に少なくても日常的に危険な行為を繰り返すと、自動的により高いリスクのレベルに上がってゆくという冒険家の死亡例を紹介している。また、リンパ節が大きくなったときの悪性リンパ腫である確率を例にとって、条件付確率、ベイズの定理を紹介している。
夫婦の旅行、地球温暖化「ゲーム」を例に囚人のジレンマを紹介している。フラクタル、自己相似性についても触れている。
「日常生活の様々なことを数学で読み解いていく」と著者が言っているように、これまで数学に関心がなかった者が興味をもつ契機になるかもしれない。初級者向き。(山本和利)