『ブラック・スワン』(ダーレン・アロノフスキー監督:米国 2010年)という映画を観た。
バレエ・カンパニーに所属する主人公に新作「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが訪れる。それは純真な白鳥の女王だけでなく、邪悪で官能的な黒鳥も演じねばならない難役である。この主人公にとってそれをコナすことはストレスが高く、さらに黒鳥役が似合う奔放な新人ダンサーが現れ、彼女を精神的に追いつめていく。映像は、現実と悪夢の狭間をさまよう主人公を映し出す。
主人公を演じるナタリー・ポートマンはローマの休日のオードリー・ヘップバーンを思い出させる。彼女はハーヴァード大学で心理学を専攻した才媛でもある。
彼女の分析によると、この主人公は強迫性障害の典型といえるそうだ。皮膚を引っかいたり、拒食症になったりと。バレエをするまでの段階で儀式的なことを行っていることでもそう推測される。医療者としてはその辺も見どころとなろう。
出演者たちは、最高のバレエ指導者の下で本物のバレエダンサーに引けをとらないだけの血のにじむような稽古を積んだようだ。
トップを維持するには、気が狂うほどの努力と絶え間ないストレスが伴うということを教えてくれる映画であった。(山本和利)