6月23日、黒松内診療の寺田豊先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「地域診断とは:community
as partner」である。
ある地域に赴任して地域医療を始める時、「あなたは何から始めますか?」という問いかけから授業は始まった。
自己紹介。月寒の家庭医量センターの紹介。患者さんの描いた絵。「にほんの里」100選のひとつ。太平洋と日本海にどちらも30分で行ける。ぶなの北限。
源流に遡る。どうする?
上流におんぼろの穴のあいた橋があった。下流での救命対策より、予防が大切。地域医療は後追いの病院医療ではない。ドイツの「クアオルト」(健康保養地)1)病院などの治療施設、2)専門医、3)交流施設、4)滞在プログラムを義務付け。静岡県の朝霧高原診療所。「優先順位を明確にした生き方」
黒松内 Phptp-Elicitation 2013(写真を使って引き出す)「黒松内で生きる」何もないからいい。清明な風景。水彩画展を開催。「田中式体操を普及中」鶏の放し飼い。何もないからできる。和菓子を作る。だからこそ、美味しい風景。「探してみよう!地域医療」の企画。
地域医療って何でしょうか?
学生各自に定義してもらう。
「地域に根ざした医療」(地域によって異なる)
地域医療の意味するところ?「地域診断をしてはじめて地域医療である」
Community-oriented
primary care
65歳女性、OPLLに罹患。地域を知る手法「フォトボイス」Photovoice(Wang, et.al,2004):写真にナラティブを付ける。ここで有名なphotovoice「不満の探求」(スクールバスの窓に残る銃痕)を紹介。「僕の乗っているバスは毎回違うと断言できます。なぜなら、窓の弾痕の穴が毎回違うからです」写真を撮って言葉をつける。テーマに合わせて写真を撮る。皆で振り返る。月寒で実施。アンパン道路。
地域視診:自分の足で(community on foot)。地区視診の16項目
- 家屋と街並み、2)広場や空き地の様子、3)境界、4)集う人々と場所、5)交通事情と公共交通機構、6)社会サービス機構、7)医療施設、8)店舗、9)町を歩く人々と動物、10)地区の活気と住民自治、11)地域性、12)信仰と宗教、13)人々の健康状態、14)政治に関すること、15)メディアと出版物、16)その他
- Community as Partner Model:地域をパートナーとして位置づけ、共に取り組んでいくことを強調している(E.T. Anderson, 2004)。車輪の中心に住民がいる。8つのサブシステムを設ける。黒松内で実施。1)物理的環境、2)保健・医療・福祉(ホームレス健診)、3)経済(商店街)、4)安全と交通(SOSネットワーク)、5)政治と行政、6)コミュニケーション(広報誌)、7)教育、8)リクレーション(遊び場)。黒松内緊急経済対策。黒松内ぶなの森自然学校。黒松内マナヴェール(生涯学習施設)。黒松内トワ・ヴェール(道の駅)。黒松内遊ヴェール。保健と医療。専門医がいない。黒松内「クアオルト」構想。地域医療を予防的観点、健康保険の視点から町おこしを進めてゆく。地域のパートナー:いいところを知っている。ナートナーシップは「2乗の幸せ」地域医療とは、そこにあるものが、かけがえのないつながりを持ち、誰一人としてかけることのない医療のあり方である。最後に学生に「地域医療」を考えてもらった。「地域のニーズに合わせる」「経済や社会も含める」「患者さんの背景、環境からも診て行く」「巻き込まれて地域を見てゆく覚悟が必要」「その地域で育った人の特性」「人だけでなく地域全体を元気にする」等の意見が出た。黒松内に赴任して新しい課題にチャレンジしている寺田先生である。(山本和利)