■Japan Diabetes
Complication Study(JDCP)
西村理明氏
糖尿病学会が主導の前向きコホート研究である。合併症(最小血管、大血管合併症)発症率を検討する。対象者は癌、腎症がないものとした。年齢は40-70歳。罹患期間:11.1年。男性の比率は60.8%。糖尿病専門医が診療。6,439名。2007-2009年から開始。
登録患者の属性
糖尿病家族歴:50%。体重;64.3kg。BMI:24.7、最大体重は47歳。高血圧の比率:45.6%。脂質異常者:46.9%。脳血管障害:4.8%。心筋梗塞:3.3%。平均FPG;136mg/dl、平均HbA1c;7.0%。平均血圧:130/75mmHg, 平均腹囲86cm。栄養指導がされている率は80%、運動療法は70%。経口薬服用が57.7%、インスリンが18.3%、両者15%前後。スタチン使用30%。
合併症の発症として網膜症、腎症、脳梗塞、心筋梗塞を追っている(2年まで)。死亡は癌死が一番多い。心疾患、脳血管障害と続く。
■J-DOIT3
植木浩二郎氏
海外の研究;糖尿病患者は6歳寿命が短い。大血管症が原因。
発症直後に介入すると合併症は減少する(UKPDS33)
HbA1cを極端に改善したら、死亡率が逆に上昇した。低血糖、インスリン、薬剤の使用が原因?
本研究は2006年6月から開始。現在4.38年経過観察になっている。2型糖尿病患者2,543名。HbA1c<6.2%、血圧:120/70mmHg、LDL<80mg/dlを目標。
結果
・平均HbA1c:6.6%。体重変化はない。経口剤平均使用率2.5剤。低血糖発症が少ない。
・ACCORDに比べて本研究は低血糖、体重増加を来たしやすい薬剤使用率が少ない。
■久山町研究
土井康文氏
地域住民研究において、糖尿病やIGTは大血管障害のみならず悪性疾患、認知症の合併症の発症率が増やすことが示された。
・脳梗塞発症の相対危険度:男性群2.5、女性群 2.0
・虚血性心疾患発症の相対危険度:男性群1.3、女性群 3.5
・悪性腫瘍死の相対危険度:IGT群1.5、糖尿病群 2.1(高インスリン血症が関連)
・アルツハイマー病発症の相対危険度:IGT群1.6、糖尿病群 2.1(FPGとは県連がない、酸化ストレスが関連)
・脳血管性認知症発症の相対危険度:糖尿病群 1.8
2002年:肥満、IGT等、代謝異常が増えている。碓糖能異常者は60%を占める。
■Japan Diabetes
Complications Study(JDCS)
曽根博仁氏
日本人2型糖尿病患者の前向き研究。専門医が診ている2,033名、平均年齢59歳(閉経後)、HbA1c;7.7%,ランダム化試験である。従来治療群と生活指導(食事、電話、万歩計、禁煙指導)を追加した治療群で比較した。
結論
欧米と日本の糖尿病患者には多くの相違が認められた(欧米と異なり介入で改善が認められた点)。日本人のエビデンスが必要である。
・脳卒中発症のハザード比:0.62
・HbA1c>9%では、網膜症発症率(8年間):50%、網膜症進展率(8年間):40%、
・血糖、血圧のコントロールの重要性が示された(欧米と異なる)
・腎症の発症率:6.7%/1000 person-yearと低く、緩解率が高かった。糖尿病+喫煙者の腎症発症・進展リスクは2.1倍である。
・糖尿病患者の肺機能は低下している。
・TGが有意なリスク要因となっている(特に女性)。(高LDL+高TG群はハイリスク)
■The
ADDITION-Europe Study
Torsten Lauritzen氏(デンマーク)
欧米人2型糖尿病患者の前向き研究。40万人の住民からプライマリケアで見つけた3,057名の白人(0.8%)、平均年齢60.3歳、5.3年経過観察。ランダム化試験である。高血圧患者は50%を占める。従来治療群と早期集学的治療(スクリーニングで早期に糖尿病患者を見つける、HbA1c<6.5%,BP<120/80mmHg, TC<5.0nmol/L)を追加した強化群で比較した。
結論
虚血性心疾患の発症がわずかに減少した(予想外に小さかった)。従来治療とのハザード比;0.83(0.65-1.05)
・未治療群と治療群で比較すると有意な差を認める。
・心疾患の発症率:従来群15.9%/1000 person-year、強化率13.5%/1000 person-year、
・血圧、TCは両群とも低下した。
・HbA1cの差はない(強化群でやや低下)。
■the Action to
Control Cardiovascular Disease in Diabetes (ACCORD)
Elizabeth Seaquist氏(米国)
2型糖尿病患者の前向き研究。心疾患のイベントをアウトカムとして、血糖または血圧または脂質(2×2)を強力に低下させる治療と従来治療とで比較検討した。多施設ランダム化研究。10,251名の志願者。40歳以上。アウトカムは心血管疾患イベント。強化群はHbA1c;6.0%,
BP;120mmHg,フィブレート、スタチンを使用。
結論
大血管障害を持つと思われる高齢の長期罹患者においては、強力に血糖、血圧、脂質を下げない方がよい。
・血糖値強化群で従来群に比べて死亡率が20%高かったため、早期に研究終了となった。
・また血圧、脂質強化治療群においてもイベント発症に改善が認められなかった。
・糖尿病に特有な最小血管合併症の発症は減少した。
・低血糖の発症は増加した(3倍)が、このような患者のイベント発症率は低かった。
・神経障害のある群、アスピリン服用群は死亡率が増加する。
結果の解釈
・よくわかっていない(低血糖が何らか関係していたかもしれない。8.1%が低血糖で死亡。認識されていない低血糖の影響もあったかもしれない)。
ACCORD-MIND Study
ACCORDのサブ解析である。55歳以上のみ。ベースラインでHbA1cが低いと認知機能が悪い。治療後の両群では差がない。
エビデンスが日々変わってゆく。絶えず勉強が必要だ。(山本和利)