医療に対する文化の影響を研究する分野に医療人類学というものがある。その第一人者がアーサー・クラインマンである。彼は精神科領域の研究を台湾で行い、この分野の先駆けとなった。
クラインマンは、著書『病いの語り』(誠信書房、1996年)の中で、「患うという経験の型はどこでも見られるが、その患うことが何を意味し、その経験をどのように生き、その経験にどうように対処し扱うかは、実に様々である。」とし、それを1)文化的表象、2)集合的経験、3)個人的経験、に区分した。
1)
病い(illness):患者独特なもの
2)
疾患(disease):治療者の視点
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徴候に翻訳
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生物医学モデル
3)
病気(sickness):社会的な関係
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障害の原因は何か?
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なぜそのとき発症したのか?
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体への影響は?
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どんな経過を辿るのか?
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どうようにコントロールできるのか?
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生活への影響は?
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治療への希望
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治療への恐れ
等の質問が含まれる。これはOSCEにおける医療面接の聴取すべき項目に盛り込まれている。
舞台はクラインマンが研究をした台湾の片田舎である。突然の父親の訃報を聞き、台湾で働く女性主人公が帰省する。病院で心停止しても、酸素吸入を受けながら救急車で家に運ばれ、そこで死亡宣告を受ける(台湾では家で死ぬことが最高の幸せと考えるから)。そしてその地域の伝統的な道教式の葬儀が執り行われることになる。占いで葬儀は7日後と決まり、それまでに、泣き女が出てきたり、音楽隊の演奏があったりとお祭りのような騒ぎになる。そんな中で過ごす7日間に父親と過ごした思い出が蘇る。本当に涙を流すのは4ヶ月後であった・・・。
ある地域の医療機関では、在宅ケアを受けて亡くなられた患者宅に四十九日になると訪問をして、患者家族の悲嘆ケアをしているという。地域医療の現場では、その地域特有の文化を考慮しながら医療展開をするという魅力も兼ね備えている。(山本和利)