『人道的帝国主義』(ジャン・ブリクモン著、新評論、2011年)を読んでみた。
著者はベルギーの理論物理学者、科学哲学者。科学哲学の相対主義を批判した『知の欺瞞』をアラン・ソーカルと執筆し、世界的に有名となった。
本書の緒言でノーム・チョムスキーが50ページにわたって執筆している。これでは共著ではないか?
本書の主張は単純で、民主国家といわれている米国のやり方は欺瞞であり、人道的といわれるお題目で好き勝手なことをしている、ということである。怒りが収まりきれずに、欧州のメディアや左翼反戦・平和運動にまで矛先を向けるという勇み足までしている。これでも初版よりも本書第2版は市民運動や平和運動への批判を和らげたという。
世界の中で行動するにはイデオロギーが必要である。最近ではそのイデオロギーが「人権擁護」となっているというのだ。
本書では、ラテンアメリカ、ユーゴスラビア、イラク、アフガニスタン等で行った(進行中)干渉政策の偽善を豊富な資料をもとに暴き出している。
米国・西欧の第三世界政策がもたらした損害は、4種類の違う効果に由来する。
1.直接の被害をもたらす
2.希望を殺す
3.バリケード効果:閉じこもり、外の世界から孤立させる
4.依存を助長し未来を奪う
3.11後の(米国の核政策に追従している)日本は、どう行動すべきなのだろうか?「人権擁護」の御旗の下で、世界の不幸が広がっているのであるとしたら、私たちは誰を信じて、何をしたらよいのだろうか?本を読めば読むほどわからなくなる。(山本和利)