まず、JR札幌病院の村上理恵子医師が、20年間、繰り返す発熱(3日間)、背部痛、一時的に炎症反応を示す40歳代女性を提示。
続いて、北海道大学の藤枝雄一郎医師が、目は発熱と腹痛を繰り返す18歳男性を提示。その後、北海道大学第二内科における不明熱患者40名の遺伝子検査結果を報告された。MEFV遺伝子変異を17名認め、最終診断はMMF変異17名(43%)、不明15名(38%)、特発性脾臓炎2名、血管炎症候群2名、シュグレン症候群1名、混合性結合織病1名、血管内リンパ腫1名、感染症1名であった。コルヒチン有効例は、MEFV遺伝子変異が多い傾向にあったが、それ以外の臨床的特徴は認められなかった。
家族性地中海熱は、次のような疾患である。周期的に繰り返される発熱と、胸部、腹部の痛み、関節の疼痛と腫脹を特徴とする。日本人でも発症し、300人前後の患者がいる。炎症を制御するパイリンというタンパクの異常が考えられている。5~20歳で症状が出始め、腹痛、胸痛、関節痛と伴に1~4日間かけて自然に良くなる発熱が起こる。 非発作時はふつうに戻る。家族性といいながら、散発例が多い。 診断は、周期的に繰り返される発熱と上記のような症状からなされることが多いが、遺伝子検査が診断の補助になる。治療の第一選択はコルヒチンで約90%の患者に有効。この結果、アミロイドーシスを予防できるので、長期間の服用が大切である。
FMF典型例の診断基準
必須項目
12時間から3日間続く38度以上の発熱を3回以上繰り返す
補助項目
1.発熱時の随伴症状として、
a 非限局性の腹膜炎による腹痛
b 胸膜炎による胸背部痛
c 関節炎(股関節、膝関節、足関節)
d 心膜炎
e 精巣漿膜炎
f 髄膜炎による頭痛
a~fのいずれかを伴う
2.発熱時にCRPや血清アミロイドA(SAA)など炎症検査所見の著明な上昇を認めるが、発作間歇期にはこれらは消失する
3.コルヒチンの予防内服によって発作が消失あるいは軽減する
必須項目と、補助項目のいずれかを1項目以上認める場合に診断
ただし、感染症、自己免疫疾患、腫瘍などの発熱の原因となる疾患を除外する
(備考:必須項目、あるいは補助項目のどれか一項目以上有する症例は疑い症例とする。
FMF典型例においては、遺伝子診断が有用であり、MEFV遺伝子変異を90%以上に認める。またMEFV exon10に変異を認めた場合、診断的意義は高い。)
日本には、非定型FMFが多いようだ。発熱期間が典型例と異なり、数時間以内であったり、4日以上持続したり、微熱のこともある。関節痛、筋肉痛などの非特異的症状にとどまり、四肢の関節炎を認めることもある。この場合、MEFV遺伝子解析が診断の補助となるそうだ。
コルヒチン投与により症例の改善を認めることが多く、診断的治療を重ねてコルヒチン投与が推薦されている。
藤枝雄一郎医師は、疑わなければ診断はできない、ことを強調された。(山本和利)