『1993年の女子プロレス』(柳沢健著、双葉社、2011年)を読んでみた。
本書はかつて女子プロレスが全盛を極めた時代にプロレスに関わった人々にインタビューしてそれをまとめたものである。特に世界最狂軍団といわれた全日本女子プロレスに所属していた者たちへのインタビューが興味深い。ブル中野、アジャ・コング、ライオネス飛鳥、長与千種等をご存じだろうか。
私自身、女子プロレスを観戦したこともないし、テレビ観戦もほとんどしたことがない。今回、ブックレビューに紹介されたのを契機に読んでみた。
本書を読むと、プロレスが好きでそれに青春を賭けた少女達の真剣な思いが伝わってくる。プロレスは筋書きが決まっていて、真剣勝負ではないと思っている読者が多いことだろう。しかしながら全日本女子プロレスのやり方(最後のフォール)は真剣勝負であったそうだ。面白いのは、そこに所属していたプロレスラー達がそのことをあまり評価していないことである(前半戦の筋書きに沿ったアクションと最後の真剣勝負のミスマッチのため)。
いじめを繰り返す者、力なく敗れ去る者、オーラ-を放ってのし上がってゆく者、放漫な経営者たち。どんな分野でもその時代を真剣に生きた人たちの話には、学ぶところが多い。
対談記事なので、読みやすく、一人一人のパートは長くないので、時間を決めて読むことができる。本書を読んでいるうちに、そこで語られる伝説の試合というのをビデオで観たくなった。(山本和利)