『フェルメール 光の王国』(福岡伸一著、木楽舎、2011年)を読んでみた。
著者は生物学者。『生物と無生物のあいだ』でサントリー学芸賞、中央公論新書大賞を受賞。
光の魔術師であるフェルメールの絵画を展示されている場所で、生物学者である著者が鑑賞し、それを記事にするという企画である。世界中にある37作中34作を鑑賞している。展示の都合で鑑賞できないときには、日時を替えて出直したりもしている。大変贅沢な企画であると思っていたら、ANA機機内誌『翼の王国』に4年間にわたって掲載された記事をまとめたものだそうだ。
オランダでは顕微鏡の父レーウェンフックとの関係を考察し、米国ワシントンでは野口英雄に思いをはせ、パリでは数学者ガロアを忍ぶ。こんな風に科学と美術を結びつけて考察するところが、本書のユニークさといえよう。
最後に、レーウェンフックの観察記録に付随している絵を、フェルメールが描いたのではないかという著者の仮説もなかなか説得力があり面白い。そのためにロンドンの王立協会に手紙を書いてお願いして1674年の手紙に添えられた観察図を克明に閲覧している。
もちろん一枚一枚の絵について分析も面白い。美術に興味がある人も科学が好きな人にも興味深い本である。
(山本和利)