札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年10月28日木曜日

アメリカン・コミュニティ

『アメリカン・コミュニティ』(渡辺靖著、新潮社、2007年)を読んでみた。

米国って最近はイラクに戦争を仕掛けたり、経済破綻の元凶となったサブプライムローン問題などで評判を落としたりしている。世界最高の医療レベルを持ちながら、それにアクセスできない国民が30%以上いる国。そしてそれを改善しようとすると、自己負担が増えるという理由で反対する多数の国民。米国ってどんな国なのだろう。米国社会のコアは、その社会を内側から支えるコミュニティであろう。本書は社会学者が9箇所の米国のコミュニティを取材した報告である。

ニューヨーク州メープルリッジのボルダホフ(キリスト教原理主義)、マサチューセッツ州サウス・ボストンのダドリ-・ストリート(ゴミの町)、アリゾナ州サプライズのメガチャーチ(草の根宗教右派)、テキサス州ハンツビル(刑務所・死刑執行の町)等、様々なところに行っている。

米国は多様だ。そして、「賛成・反対」の二元論だけでなく、細かな議論もある。反論が用意されて一つに収斂しないようにはなっているが、その中心にあるのが資本主義、市場主義であることは否定できない。

米国の人々が様々なコミュニティに帰属せざるを得ない背景も見えてくる。ゴミの山・残飯の山のサウス・ボストン・ダドリ-・ストリートを有機野菜の香りで満たした試みなどは、地域再生の参考になろう(トップダウンの企画力・指導力・予算が重要と痛感する)。これを読むと米国への理解が少し深まるかもしれない。(山本和利)

炙り屋本店

過日、札幌ススキノの海鮮料理店『炙り屋本店』に学外講師と学生を連れて行ってみた。

数人でも個室で静かに話ができるのがうれしい。刺身の盛り合わせ、ホッケの干物を注文。サラダが4種類あり分量も多い。生ラムの串焼きも美味しい。梅酒の種類も豊富。

会話も弾んで、日本の医療問題からそれぞれの人生問題まで多岐にわたる。最後は甘いもの(シャーベットかゼンザイ)をとってお開きとなる。(山本和利)

2010年10月26日火曜日

離島、米国そして札幌

10月26日、手稲家庭医療クリニックの小嶋一先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「家庭医療の実践- 離島、米国そして札幌-」である。

まず、自己紹介をされた。東京生まれ。居酒屋で酔っ払いに囲まれて育った。九州大学卒。沖縄中部病院で研修。離島医療に従事。米国で家庭医の研修を受ける。2008年手稲渓仁会家庭医療センター(愛称「かりんぱ」)で活動。19床の有床クリニック(ホスピス・ケア)で、年間100名の看とりをしている。初期研修医4名、後期研修医6名、内科から研修医4名。内科、小児科、産婦人科を標榜。在宅医療もしている。地域医療への貢献(幌加内へ研修医を派遣)も目指す。

これまでの道のりをさらに具体的に話された。初期研修は野戦病院のようなところで沢山の患者を診た。担当患者350名。離島に行くことが決まっていたので積極的に研修をした。週に140時間働いたことがある(寝る、食う、仕事しかない)。卒後3年目の離島経験。伊平屋島、人口1500人。医師一人、看護婦一人。毎日当直。風邪から心肺停止、外傷、精神錯乱まで何でもありであった。慢性疾患への対応がわからなくてもう少し勉強したくなった。

米国Family medicine residency:2003年、先輩が道筋をつけてくれて米国へ行くことになった。5年間研修した。3年間の研修で無理なく開業ができる段階的なプログラム。開業を前提とした教育。継続外来専門施設で研修。外来診察数:150人(1年目)+1500人(2-3年目)。Family Health Center(FHC)は、指導医と研修医がグループ診療を行う。外来にロールモデルがゾロゾロいる。経営なども実地で学べる。

FHCでよく遭遇する問題:小児検診、風邪、健診、皮膚科、腰痛、腹痛、(保険の関係で糖尿病、高血圧が意外と少ない)。術前検診、避妊相談、うつ病、禁煙指導、麻薬中毒、等。FHCで家庭医の幅を思い知った。米国の研修で納得したのは、ロールモデルがいる、入院と外来のバランスがとれている、一人立ちするための移行システムである、等々。

家庭医・家庭医療とは
「患者が望むこと」はいつもシンプルである。すなわち原因の追及、体調を治してほしい、等。風邪の患者さんを風邪の診療だけで終わらせない。エビデンスを大切にする。これまでの縦割り医療では実現できない視点を持つ。予防、未病、健康増進も。複雑な要因を解きほぐし解決する。アクセスが容易である。人生の始まりから終わりまで関わる。年齢、性別、病気の種類を問わない。入り口としての役割。患者の味方になって共に悩みを分かち合う。複雑な問題を整理して導く。医療のプロフェッショナルである。

ロールモデルやメンター(自分を理解、先を進んでいる、成長を助ける、尊敬に値する)に出会うことが大切。

現場主義:スキーはスキー場で習え。へき地医療を知らずして家庭医とは名乗って欲しくない。

家庭医の5つの武器
・ Community Medicine
・ Community Outreach
・ Behavioral Science
・ Quality Improvement
・ Practice Management
時間の関係で詳細は別の機会にということであった。

日本の家庭医には未来がある。その理由として4つ挙げられる(僻地医療の崩壊、予防医療のエビデンスに基づいた実践、産科・小児・救急医療の人手不足、恵まれた保険制度)。

最後に学生にエールを3つ送られた。「武器を磨け」「良きパートナーを」「二歩先を読み、一歩先を照らし、今を精一杯」

学生たちは家庭医療の具体的な内容や離島医療、米国の研修医の実態について知ることができ、感銘した者が多かった。講義が終わってからも追っかけで二名が昼食に参入してくるほどであった。小嶋先生、ありがとうございました。(山本和利)

アドバイザー面談

10月26日、札幌は初雪。みぞれ。
10月25日、札幌医科大学学生のアドバイザーとして担当の学生と面談した。11名中9名が参加。

近況を尋ねると、アキレス腱を切った者や排尿失神で倒れて顔面を怪我した者がいたが、大きな問題はないようであった。

大学への要望として、講義の冷房・暖房をしっかり入れて欲しい、医学部・体育館付近にウォータークーラー(冷たい水飲み器)を設置して欲しい。医学部内に5年生が座れる部屋が欲しい、等があがった。
2年生から、進級規定が厳しくなり進級できるかどうか不安を抱いている者が多いという意見が出た。

洋菓子店から取り寄せたロールケーキを食べながらくつろいだ雰囲気の中会話が弾み、約1時間で散会となった。(山本和利)

2010年10月25日月曜日

日本プライマリ・ケア連合学会理事会

10月24日、東京の医師会館で開催されたプライマリ・ケア連合学会理事会に参加した。

はじめに前沢理事長の挨拶。各支部における会合における活動を紹介された。
9月19日、20日に東京医療センターで行った専門医・認定医試験で、専門医の受験者は67名で合格者は56名(83%)、認定医は24名受験し合格者は21名(87%)であった。

秋季セミナーの開催予定を報告された。人気が集中していて希望者が受講できないものをある。より多く参加者が集えるよう日時や規模について検討中である。

各種委員会(広報・学会誌編集、生涯教育、認定制度、地域ケアネットワーク、倫理、研究支援、国際関係、渉外、学会名称検討、選挙制度検討、等)から活動方針・活動計画の報告があった。話題:地域ケアネトワーク委員会が自殺予防WGを立ち上げた。倫理委員会は男女比を1対1とした。選挙のブロック分けをどうするか。来年度の夏期セミナ(8月6-8日)は経費を削減するため筑波大学の施設を利用する。若手医師部会で冬季セミナーを企画中(2011年2月19日、東京大学)。病院総合医の専門医に関する事務局が決定(あゆみコーポレーション)。学会誌の電子化に伴い、どこまで一般の方がアクセスするようにするかが話題となった。学術集会での口演の査読することになった。

税理士事務所との契約が成立したことが報告された。各支部からの活動報告。プライマリ・ケア薬剤師認定制度について。人気が高い(薬剤師がとりたい資格第2位)。生涯研修受講の認定となる。会計報告(総額1億円)。

ロゴ・マーク、シンボル・カラーが承認された。白黒印刷をしたとき見にくい部分があることが問題になった。

第2回学術大会は7月2,3日に札幌で開催。その内容の発表があった(メインテーマ「時と人をつなぎ 今飛躍の時へ」)。参加費は医師が1万円、医師以外の職種が5千円程度。口演希望者には査読システムを考えている。第3回学術大会は九州で開催。第4回学術大会は東北ブロックで開催予定。医事新報の新連載企画(薬剤連載)が承認された。日本専門医制評価・認定機構への加盟。プライマリ・ケア認定医Bコースを2014年までとする(経過措置)。地域医療再生への寄与、日本歯科医師会との連携、WONCAフィリピン大会への途上国参加者支援について、報告があった。次回の理事会は2011年3月6日。(山本和利)

ペルシャ猫を誰も知らない

『ペルシャ猫を誰も知らない』(バフマン・ゴバディ監督:イラン 2009年)という映画を観た。

イランのクルド人監督バフマン・ゴバディがポップ・ミュージックへの規制の厳しいイランを、実在の事件・場所・人物に基づいてドキュメンタリー風に映画化したものである。デビュー作の『酔っぱらった馬の時間』はイランから迫害を受けるクルド人を描いていた。第2作目が『わが故郷の歌』、第3作目が『亀も空を飛ぶ』。今回は当局の規制厳しい中、その目を逃れながら密かに音楽活動を続ける若者たちの姿を描いている。当局に無許可でゲリラ撮影を敢行したそうだ。

出演者のほとんどは実在のミュージシャンたちである。地下室で音が漏れないように工夫しながら練習したり、田舎の牛小屋で練習したりといった場面がユーモアを交えて描かれる。ペルシャ語のラップミュージックも登場する。

監督はこの映画が完成後、イランを離れたそうだ。主役の2人も撮影が終了したわずか4時間後にイランを離れたらしい。反権力を貫き通す強靱な精神力に支えられて作られた映画である。音楽好きの方は是非ご覧下さい。(山本和利)

家庭医療学の研究

10月22日、藤沼康樹先生に学生講義終了後、スタッフ向けの講義をしていただいた。講義のタイトルは「家庭医療学の研究対象」である。
先生は今、リサーチに興味があり、プロジューサー役をしている。一流の研究者が素晴らしいメンターとは限らない。中小病院の現場の人とリサーチをするのは大変(自己負担のない研究はなかなか進まない)。現在、自腹で12名集めた。

質の高い家庭医療・プライマリケアを効果的・効率的に寄与する学問分野である。単純なヘルス・リサーチではない。
「日本の家庭医療の課題から」
1. 質
(ア) 質を何で測るか
(イ) 安全性、有効性、患者中心性、適時性、公正性
(ウ) 測定のスケールを作る、幸福かどうか
・継続的質改善:T2(ガイドライン通りの診療がなされているか)、SEA
・経営、運営、マネージメント
・生涯学習のシステム作り
・chronic care を大枠で考える:systematic approach(chronic care model)
2. 患者中心性
・共通基盤の確立
・意志決定の実施
・healingと深い繋がり:deep interviewをする
3. テクノロジー
・情報テクノロジー
・診断・治療テクノロジー
4. 研究
・研究ネットワークの構築
・アカデミック部門の協力
5. 政策
・医療政策への関与
・患者の立場から
・Social medicineの立場から
・研究に基づく提言
・地域基盤型参与研究:運動に近い、photo mapping
6. 教育
・教育の充実
・生涯教育

教室員それぞれが研究へのモチベーションが上がったのは確かであるが、このように文字にしてしまうと講義を直接受けたときのインパクトが伝えられないのがもどかしい。
藤沼先生、ありがとうございました。(山本和利)