札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年12月15日土曜日

医師に必要とされる多角的能力


1214日、医学概論Iで「医師に必要とされる多角的能力」の講義を行った。これは札幌市内の医療機関で行う実習の導入として企画されたものである。

まず、医師の仕事について高校生レベル向けに書かれた本の内容をかいつまんで紹介した。

後半、これまでに私が出会った様々な患者さんたちのことを提示した。リアルな社会の物事は、複雑で、不確実で、不安定で、独特で、価値観に葛藤があり、単純な対応ができないことを示した。

入学直後に目を輝かせて聞いていたのに、私語をしたり机に顔を埋めている学生が少なからずいたのには驚いた。

札幌市内での臨床実習で、「医師に必要とされる多角的能力」を実感して欲しい山本和利)

2012年12月9日日曜日

身体疾患と不安・抑うつ

128日、北海道身体疾患と不安・抑うつ研究会に参加した。

 北守茂氏の「難治性過敏性腸症候群の3例」

10代女性、長期にわたる下痢と腹痛、不登校。試験で一番前の席で、下痢恐怖の予期不安。自己臭恐怖。

IBSは4型。下痢型、便秘型、混合型、分類不能。血便、発熱、体重減少がある場合には、器質的疾患の除外が必要。コロネル、トフラニールを処方。重症化するにつれて精神症状が目立ってくる。

20歳代男性。腹痛と予期不安。いじめの対象になるため学校ではトイレに行けない。バスにも乗れない。器質的異常なし。直腸感覚閾値が低下していた(これはIBS患者全般に当てはまる)。直腸生検でPost-infectious IBS。自律訓練療法。解決志向型作業療法(原因を追究しない)。就職できた。

30歳代女性。腹痛、水様性下痢、摂食障害、嘔吐、無月経。体重減少が著しい。家庭問題あり。筋力低下。点滴するが改善なく、点滴に不信を抱く。内視鏡で異常なし。解決志向アプローチで対応している。

IBSの治療

1.一般的アプローチ

2.心身アプローチ

3.認知療法(認知行動療法、絶食療法、催眠療法)、原因追究よりも人間関係の構築の方が有効である。

 井出雅弘氏の「過敏性腸症候群並びに慢性疼痛の心身的治療」

IBSのRome II診断基準を紹介。機序:脳腸相関。機能性胃腸症候群。
50歳代男性。広場恐怖を伴うパニック障害と下痢型IBS。予期不安が強く、電車に乗れない。薬物、支持的精神療法、暴露的接近アプローチ。桂枝加芍薬湯、イリボーを追加で徐々に改善。意外と漢方薬が効く印象を持っている。自臭症にトフラニールが効くことあり。

 慢性疼痛の治療:クロナゼパム(リボトリール)、アミトリプチン(トリプタノール)が効く。最近ではリリカ、トラムセットを処方することもある。注意を他へ向ける(現実生活優先)。

悪天候により予定の演者が到着できず、北見公一氏が急遽「慢性頭痛と不安・うつ」の講演を行った。

慢性頭痛患者は多い。薬を毎日、68錠を内服している。はじめは効いたが、だんだん効かなくなった。生理前に片側がガンガン痛む。謳気、光に耐えられず、暗い部屋で静かに寝ている。母親が頭痛持ち。不眠で肩に索状硬結、傍脊柱筋筋膜痛→三叉神経第一枝を刺激する。生活環境が変わった。これは慢性連日性頭痛である。(片頭痛の慢性化・変容性片頭痛)誘因:不眠、不規則、不安・抑うつ、心的外傷体験。

治療:
睡眠衛生指導、睡眠・悪夢の改善、セロトニンを増やす、予期不安を減らす、トリプタン製剤。薬物乱用頭痛。反跳性痛みである。常用薬を止めさせる。予防薬を処方する。(クロナゼパム1/2錠、アミトリプチン1/2錠)、発作時にトリプタン製剤。これらを患者にわかりやすく説明する。パンフレットも利用する。

過敏性腸症候群や頭痛に対して、一般的事項と講演者の豊富な経験を踏まえた有益な講演会であった。(山本和利)

2012年12月7日金曜日

community as partner

127日、月寒ファミリークリニックの寺田豊氏のcommunity as partner

講義を拝聴した。

キーワードは「Health for all」:何か問題が隠れていないか。

症例(DV,母子家庭等)を提示しながら話が進む。(北海道は母子家庭率が高い)

 
プライマリ・ヘルスケアとは

WHOアルマ・アタ宣言

・「health for all

フェミニズムについて考えてみる。

・ケアリングや他者の世界観・経験を重視

・私たちの理解を深め、社会変容への理解をもたらす。

源流に遡ること

・溺れる人が多い→見張り小屋→上流に危なっかしい橋がかかっていた

・「根本原因の解決に取り組む」

地域との対話

・フォトボイス:写真に声を付ける。

・対話からエンパワーメント(特長は信頼、意見交換、希望、批判的思考)

・地区視診アンケート16項目(学生個々に記入)windshield survey

 8つの要素

1.物理的環境、2.保健・医療・福祉(ホームレスが多い地区は住みやすい、ホームレス検診)、3.経済(商店街を見る、失業率)、4.安全と交通(交通機関は何か、住民は安全と感じているか、SOSネットワーク)、5.政治と行政(ポスター、集会)、6.情報(広報誌)、7.教育(大学があるか、いじめ率、不登校)、8.レクリエーション(子どもたちの遊び場所)

・地元学(吉本哲郎氏が提唱):ないものさがしを止めてあるもの探し

 

Community as partner model

・地域で医療をしているだけでは地域医療とは言えない。

・コミュニティの目指すべき目的や解決法を施策化し、コミュニティ・エンパワメントに繋がることを目指す。

・「社会的共通資本としてのコミュニティ」(宇沢 弘文)

・「笑顔アゲイン」プロジェクト

 

パートナーとしての地域医療モデル

・地域診断でストレッサーを評価し、コミュニティにエンパワーメントを付与する。

・「community is partner

地域医療とは、そこにあるものが、かけがえのない繋がりをもち、誰一人として欠けることのない医療のあり方である。

 

最後に学生個々人に「地域医療」を定義してもらった。そしてその「地域医療」をみなで作り上げてゆきましょう、という言葉で締めくくられた。(山本和利)

 

 

2012年12月4日火曜日

地域医療と救急医療


124日(火)「地域医療と救急医療」について、医学部4年生に講義をしました。

以下、授業内容を要約します。

これまで、我が国の救急医療体制は医療機関の体制整備を中心としていましたが、緊急を要する救急搬送中の傷病者の医療確保を図る体制整備、いわゆる病院前救護体制の構築が進められております。

病院前救護におけるメディカルコントロールとは、 地域全体を1つの医療機関とみなして医療機関内と同様の仕組みで傷病者に提供する医療サービスの「安全」と「質」を保証することです。

プロトコルとは、医学的根拠に基づいて、地域の特性に応じて策定します。

プロトコルで指示する内容(4つのT

1.Triage:観察に基づく緊急度・重症度評価

2.Treatment:安定化・処置

3.Transport:搬送手段、搬送時間

4.Transfer:搬送先医療機関

救急救命士における院外心停止例に対する医師の具体的指示(特定行為)

1.乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液

2.食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク及び気管内チューブによる気道確保

3.アドレナリンを用いた薬剤の投与

以上、地域全体をひとつの医療機関としてとらえ、地域特性に応じたプロトコルを作り 、MC協議会を通して多職種で「顔の見える関係」を構築することが大切であると考えます。

(助教 河本一彦)

地域医療


本日、医学部4年生を対象に「地域医療」の講義をさせていただきました。

地域の診療所で勤務した「2年間」について、自分が経験したこと、苦労したことなどを講義しました。講義後のアンケートの中で「地域医療を大切と思っているのならば、どうして大学にいるんでしょうか?」というようなニュアンスの質問がありました。

その辺、講義できちんと説明すべきだったと反省しています。20115月より大学に来て勉強している理由は「よりよい地域医療のシステムってどうなの?」というのが本題です。勿論、地域医療を勉強して資格をとるというおまけもございますが・・・。

 このブログに大学にきた理由を書くことで質問の回答とさせていただきたいと思います。

(助教 武田真一)

2012年11月30日金曜日

臨床疫学のまとめ

1129日、4年生を対象にした「臨床」シリーズの最終回の講義を行った。

前半は、第一外科の水口准教授による「ガイドライン」の話。ガイドラインが出来るまでのプロセスをわかりやすく語ってもらった。

科学的に現象を説明しようとする場合、医療ではy=ax+bという一次関数にしたモデルを採用している。健康でいる率をY軸、喫煙年数をx軸にとるとS字型をとる。それを一次関数(直線)にしようとするには、Y軸の健康でいる率をオッズに変換してグラフを書くと指数関数に近くなる。そこでそのオッズをさらに対数にすると直線に変換できるのである。この手法が多重ロジステック回帰分析である。

そして現象がどのくらいその直線に乗るかみるのが寄与率である。このような多変量解析を用いて計算しても、生身の人間を対象とした研究では相関係数はせいぜい0.5にしかならない。つまり統計学的には、寄与率は0.5×0.5=0.25であり、人間を対象にした場合25%しか説明できないのである。とは言え、科学的であるためには、絶えず勉強して25%の科学性を確保する努力が必要であることを強調した。

 最後に「ハチはなぜ大量死したのか(Fruitless Fall)」、「奇跡のリンゴ」(石川拓治著:幻冬舎 2008年)など、科学的に農業に取り組む話をした。(山本和利)

 

2012年11月22日木曜日

11月の三水会


1121日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。松浦武志助教が司会進行。後期研修医:2名。他:7名。

研修医から振り返り2題。

ある研修医。長引く咳の0歳児。扁桃腺培養で百日咳。急性胃腸炎後の低血糖の4歳児。ケトン陽性。アセトン血性嘔吐症。ノロウイルスとロタウイルスの重複感染。発熱、嘔吐、腹痛で受診した21歳男性。McBurney圧痛あり、虫垂炎の疑い。腹痛・便秘の81歳男性。腹部に腫瘤。排便で軽快。サバすし摂取後の眼瞼腫脹。ヒスタミン中毒の疑い。4日間続く咽頭痛、発熱の20歳台女性。ウイルス性(EB,HIVを考慮)。めまいが主訴の60歳台女性。Epley法で改善。前日からの臍周囲の腹痛を訴える50歳の男性。CTで小腸壊死。開腹手術となる。Non-occlusive mesenteric infarctionであったか。

80歳代女性。ある肺炎の一例。咳、喀痰。慢性C型肝炎、高血圧の既往。38.1℃、BP:94/64mmHg, HR;80/m, SpO2:92%, RR:16/m,呼吸音減弱。WBC;1200,Hb:10.7, PLT:10万、BUN:36, Na;128, K;2.9, CRP;13, TSH:42,D-dimer:1.6XP:左肺に浸潤影。胸水を認める。喀痰でグラムを施行し、抗菌薬を開始。甲状腺機能低下状態と判断し、チラージンも処方。降圧薬を中止した。喀痰吸引を継続。痰つまりが強く、SpO2が低下する。心肺停止となり、気管内挿管をし、ICUへ移動。喀痰からクレブジエラ菌を検出。敗血症が考えられた。一時的に蘇生したが、最終的に家族に見守られながらなくなった。クレブジエラ肺炎による肺炎と考えた。急激に病状が悪化したことに驚いた。初期データから敗血症への移行が予測されたにも関わらず、対応が遅れてしまった。早期にICUに入室させるべきであった。

クレブジエラ肺炎:重症化しやすい。院内感染症、免疫不全患者に多い。COPDなどへの2次感染も多い。高齢者では敗血症、死亡例が多くなる。抗菌薬耐性菌が増えている。カルバペネム系抗菌薬を使う。

クリニカル・パール;肺炎では重症度を判定し、予後不良例では速やかにICU管理とする。

コメント:肺炎というより膿胸であったのではないか。胸水穿刺をすべきであった。肺と交通しているのではないか。

ある研修医。入院症例。尿路感染症の80歳代女性。PEG後に症状改善。糖尿病、蜂か織炎。Afでプラダキサ、ロキソニン内服中であったが、胃潰瘍出血を起こした。抗潰瘍作用があるのは、PPIとサイトテック。風呂で溺れた高齢女性。両肺野肺炎、肺水腫と診断。非定型肺炎と心不全と診断し治療(クラリスロマイシンと利尿剤)で改善。溺れた原因は何か?風呂の中で失神したのではないか?AMIの可能性はなかったのか。失神の原因の大部分は心臓由来である。発熱、胸膜炎の高齢女性。喘鳴が続いている。SpO2が低い。拘束性障害であったが、結核はない。家族が自宅で看護できなくなった脳転移を来たした肺がん末期患者。膝痛の高齢男性。偽痛風と診断。心窩部痛あり、胃癌による多発肝腫瘍が見つかる。COPDが基礎にある肺炎。外来患者:腹痛主訴の患者、たまたま撮ったCTで腹水、肝臓委縮があり、肝硬変であった。血管や門脈奇形はなかったか?虫垂炎と診断し手術となった患者。

非ホジキンリンパ腫で緩和ケアを行った70歳台の女性。Af,嗄声で耳鼻科を受診し非ホジキンリンパ腫と診断された。化学療法を施行。放射線療法。気管切開と腸瘻が造設されている。皮下結節が多数。CTで気管食道瘻がある。皮下腫瘤多数。胸水あり。家族は早期の終結を望んでいる。

緩和ケア専門医はいない。利尿剤、フェントステープを使用。身の置き所のない倦怠感にリンデロンを開始。塩酸モルヒネを増量。腸瘻からIVH管理に変更。不穏もみられたか最終的に死亡。

コメント:最後にIVH管理にする必要があったのか。皮下点滴でよかったのではないか。経験を積んでくると、何もしなくなる傾向がある。(最後だけモルヒネの持続皮下注入くらいである)。

ニポポ卒業生が研究について相談のため参加。

30歳台女性。4年前に右の自然気胸。保存療法で軽快。今回、自然気胸の再発(50%の虚脱)。脱気のためチューブを挿入。翌日未明に呼吸苦。ドレナージから血液が洩れて来る。HR:120/m、BP:100/70mmHgSpO2:90,経過観察3時間後、HR:150/m,顔面蒼白。胸腔穿刺した。緊張性気胸であった。緊急手術で事なきを得たが、癒着が剥がれた怖い事例であった。

クリニカル・パール;気胸にドレナージをしても安心しないこと。

前回、報告した、数カ月かけて動けなくなった80歳代女性(プレドニン10mg、アザルピジン内服中。両下肢に紫斑がある。下肢の筋力が明らかに低下。WBC;20000CRP;20)のその後。血管炎、悪性関節リウマチ(リウマチ血管炎)であった。

今回は卒業生が参加してくれ、経験を披露してもらいながら、適切な指導をしてくれた。(山本和利)