はじめに参加者の自己紹介。家庭医療への熱い思いをそれぞれが語ってくれた。
樺太生まれ。飲食店経営。夫は胃がんで他界。その後、厨房で仕事。生活保護受給。長女と二人暮らし。子ども4名は札幌市内に居住。
イレウスで入院時、HbA1c;11.3%.急性膵炎、1型糖尿病と診断された。
「入院したくない」「血糖値が高めの方が体調がよい」という思いがある。糖尿病ケトアシドーシスや低血糖で数回入院している。通院が困難となり、往診導入となった。
問題点
#高齢認知症
#インスリン管理が必要。
#食事管理
#同居者が病気で、患者の面倒が看られない。他の子供の理解もない。
往診前の訪問(長女の思い)
・入院させたくない。
・血糖値の異常は仕方がない。
・このまま亡くなったほうが本人は楽ではないか。(介護放棄?を感じた)
経過
インスリン1回注射。低血糖がしばしば起こる。400mg/dl以上もしばしば。慢性の臍周囲の持続痛を訴える。
入院を提案したが、拒否。インスリン2回うちも拒否。自己血糖測定も拒否。
BPSモデル、INTERMED(病歴、現状、見通しについて、BPS+医療との関わりが加わる)で分析。
同居者を交えた多職種在宅合同カンファランスを行った。同居者の誤解が減り、医療者と理解が深まった。インスリン量を減らし、低血糖を減らすことにした。
Patient-Centered Care(認知症ケアby
トム・キットウッド、1990年)
認知症の人の視点で世界を見るようにする。相互に支えあう。倫理と社会心理学を重んじる。
低血糖発作の頻度が減り、同居者との人間関係が改善し、同居者の喫煙本数も減少した。また慢性腹痛の評価をすることになった。大動脈解離が疑われたが、造影CTは回避した。
このような複雑な事例では、①問題点の抽出、分析、②患者・家族とのコミュニケーション、③多職種連携が重要であることがわかった。
90分にわたるプレゼンテーションであった。家庭医療の手法を獲得しながら、内科的な診断・治療技法についても同時に向上させることを新たな目標に掲げ会は終了となった。(山本和利)