今回は、「疼痛以外のマネジメント」である。
症例検討3題。
■60歳代女性。乳がんによる骨転移。やせが著しい。オキシコンチン40mg×2、ロキソニン180mg 3×を内服。腰椎転移が判明した。
1)疼痛緩和における薬物はどうするか?
・アセトアミノフェン4gまで使用できる。2400mg分4を処方。
・ケタミン(唯一エビデンスがある)。50mg-200mgを持続静脈注入。
2)非薬物治療をどうするか?
・コルセット固定(ADLが制限される)
・放射線治療 30Grey:70%に奏功する。しかし、時間がかかる(すぐ効かない)。
3)呼吸困難感(呼吸不全はない)と画像の増悪に対して?
・モルヒネ:エビデンスはない。呼吸回数を減らす。痛みと同様に使用。吸入のエビデンスはない。
・抗不安薬(ジアゼパン):緊張緩和、呼吸数は低下する。
・コルチコステロイド
・酸素投与でよくなる患者さんもいる。
・鎮静が必要なこともある。
・呼吸困難感(自覚症状)と呼吸不全(SpO2の低下)を区別すること。延髄の呼吸中枢が関与。アセスメントをすること。
■70歳代男性。悪性リンパ腫。化学療法+放射線療法。殿部痛。ビリビリしびれる。オキシコンチン40mg×2、ロキソニン180mg 3×を内服。
1)しびれを評価し、薬物はどうするか?
・神経性疼痛ではないか。坐骨神経由来のしびれであった。抗けいれん薬が効く。リリカ、ガバペンが第一選択である。リリカの方が切れがよい。よく効く。副作用は眠気と浮動性のめまい。リリカ25mg分1から始める。300mgまで増量可。
2)倦怠感の出現には?
・身体的異常を除外する。
・コルチコステロイド(リンデロン):一日1回内服でよい。朝内服(不眠の原因になるから夜は避ける)、Naを貯めないので、胸水・腹水があっても使いやすい。
・酢酸メドロキシプロゲステロン(ヒスロンH):600mg-1200mg/日。
・アンフェタミン(リタリン)は、今は使えない。
・心理療法、音楽療法、アロマテラピーなど。
■60歳代男性。胃癌によるがん性腹膜炎。アセトアミノフェン2400mg、オキシコンチン10mg分2、ノバミン3T分3.じっとしていられない(アカシジア)。謳気、嘔吐が強い。
1)謳気、嘔吐を評価し、薬物はどうするか?
・オランザピン(ジプレキサ)が著功した(世界的に注目されている)。2,5mgで開始。半減期が長い。高血糖に注意。
・サンドスタチンが便利。3Aを持続皮下注入。
■便秘
・センノサイド、カマ。ラキソベロンは耐性がつきにくい。
■高Ca血症
・脱水の補正、ビフォスフォネート、ステロイド、エルシトニン
■せん妄
・原因の除去
・セレネース、リスパダール
■輸液
・500-1000ml/日に控える。
■鎮静
・鎮静水準(深い、浅い)と鎮静方法(持続と間欠)を組み合わせる。
・倦怠感と呼吸困難感が最期まで残ることが多い。
・ドルミカム10mg+生食100mlを点滴する。耐性が起こる。深い鎮静にはフェノバールの持続皮下注入を選択する。
今回は、二人1グループになって話し合いをし、意見を出し合った。事例を中心に話してもらったのでわかりやすく、即使える実践的な講義であった。(山本和利)