『大津波と原発』(内田樹、中沢新一、平川克美著、朝日新聞出版、2011年)を読んでみた。
東日本大震災1カ月後に行われた鼎談を出版したものである。「天災である津波と原発事故は全く異なる事象である」という共通認識から鼎談は出発する。
天災に対する対処法はわかっているが、原発事故に対する対応がわからない。日本の首脳部はそれに対して場当たり的なブリコラージュで対応していることを批判する。
命に関わる問題なのに経営効率が優先され、心ある科学者の提言が無視されてきたことを問題視している。
宗教学者の中沢氏は原発を神学問題ととらえて発言している。さらに原発反対を核とした「緑の党」を立ち上げたい、また首都機能が分散され、札幌、大阪、博多がこれから重要な場所になっていくと述べている。
来るべき未来モデルは、また復興の基本思想は、どうあるべきなのか。課題は多い。
災害後の発想として、「贈与」(ボランティアの発想)が重要になるということは三者とも一致した意見である。
長期的な視野で、日本全体を考える政策(医療はもちろん)が求められていることを痛感する。この本の著者たちが日本においては本流ではないこと(異端)が一番問題である、と感じるのは私だけであろうか。(山本和利)