「地域医療現場で研修医は何を学ぶか」という研究取材の第2弾である。
今回の取材地は千葉県南部の亀田ファミリークリニック館山。宿泊地館山へは、東京駅前から夜間のハイウェーバスで入った。乗客は2席を1名で座り、言葉少なく眠っている者が多い。イルミネーションの中を走り、夜の東京湾を越えての道のりは思ったよりも短かった。井上陽水の「あー、夜のバスが・・・」というメロディが突然浮かんできた。館山駅前の予約したホテルは素泊まりであり、部屋は広いが薄暗くランケーブルが設置されていないのが辛い。と思っていたら出発直前にランケーブルが設置されていることを発見。
朝、8時半にタクシーで亀田ファミリークリニック館山へ。海辺の県道脇に大きな看板が目立つ巨大な建物に到着する。早速、医師、訪問看護師、ケアマネージャー、訪問PT,OT総勢20数名で行う朝の申し送りに、見学希望の初期研修医1名と一緒に参加させてもらう。電子カルテを見ながらの報告が各部署からなされてゆく。皆さん私服なのでどの人がどの職種なのか区別がつかない。医師の内訳は指導医5名、研修医11名で運営されているそうだ。たくさんの医師がいて羨ましく思えるが、家庭医プログラムが全国にできるようになり、ここでも医師、研修医の確保が簡単ではなくなってきているらしい。
岡田院長に院内を案内していただく。この施設は、クリニック、訪問看護ステーション、リハビリ室、歯科、透析室の5つの部署で構成されている。もともとはスーパーマーケットであったものを医療施設に改築し、門前薬局もマクドナルドのドライブスルーであったのだと。広々としたスペースの中で、外来診療、リハビリや透析が行われている。それでもまだ利用されていないスペースがかなりあり、将来の拡張用にリザーブしてあるのだそうだ。最近ではスポーツ医学の外来を週2回はじめ、リハビリ、透析、妊婦健診に加え、ユニークな活動の一つとなって定着しつつある。
シニアレジデントの診察を脇で見学させていただいたが、一人15分の予約患者さんに対して丁寧な診察をしていた。高齢者へのインフルエンザの予防接種の勧めや転倒を懸念して家族に防止策を提案するなど、家庭医らしさを感じる診察風景であった。診察室には同伴者のための座り心地のよさそうなソファが設置されていたのが印象的であった。
午前の診療終了後、後期研修医の方にインタービュをした(この夏の家庭医専門医試験で私が模擬患者役となったブースで受験した医師が2名もいて、そのせいもあってか様々な便宜を図っていただいた)。地域医療の現場で感じた良い点を挙げていただいた後、家庭医を増やすにはどうしたらよいか、医師を確保できない地域をどのようにしたら充実させることができるかについて訊いてみた。この話題になると俄然議論が盛り上がってきた。私の持論である「医師として20%の時間を公共のために」という意見は概ね賛同が得られたように思えたが、方法論については様々な意見がでた。
帰りの時間となったため後ろ髪を引かれながら東京経由で、次の宿泊地浜松へ向った。
(山本和利)