7月5日、新宿で開催された第13回全国大学総合診療部連絡協議会に参加した。
主幹校東京医科大学の坪井良治病院長の開催挨拶の後、文科省高等教育局医学教育課手島英雄室長から、「大学病院の諸課題について」の講演があった。
S56年に川崎医科大学、S61年に佐賀医科大学に総合診療部が設立。現在、大学病院における総合診療科は62大学病院にある。教員数(助教は含まず)は167名。
大学に関係する動き。
・医学教育の改善・充実。目標は5項目ある。地域で求められる医療人材の養成。基本的な診療能力の習得・評価。診療参加型実習。国際的な質の充実。研究医の養成。
・総合診療医の養成。高齢者を幅広く診ることができる総合診療医を養成。新たな動きとして「総合診療専門医」を基本領域の1つとして加えることが挙げられる。
・特定機能病院の承認要件の見直し。更新制度を導入する際、評価の在り方を検討する。紹介率の計算式を変更する。紹介率>50%、逆紹介率>40%。英語論文で筆頭著者が当該施設に所属し、年間100以上。臨床治験>年間10件。倫理委員会が設置されていること。
・「日本版NIH」を創設する。内閣に推進本部を置く。詳細はこれから検討。
・医療イノベーションを推進してゆく。
・リサーチマインドを持った総合診療医養成の事業に対して59の応募があった。
東京医科大学病院総合診療科の取り組みを平山暘示教授から。
都心でプライマリケア教育の拠点を作る。周辺に住宅街、官庁街、歓楽街がある。綜合内科的役割。卒前教育。初期研修医の外来教育。生涯教育、研究。一日90名の外来患者。季節変化はない。全身/主訴不特定患者が20%。
後期研修には6つのコースを用意している。最近、総合感染診療コースを新設した。
特別講演は「日本プライマリケア連合学会における新しい専門医制度について」筑波大学の前野哲博教授から。
研修医の登録は年間100名と少ないのが現状。専門医の名称は「総合診療専門医」に落ち着いた。専門医の基本領域に据えられたことは大きい成果である。諮問の委員会では外来、救急、病棟、地域での事例を提示。外来では検診後の指導、予防接種、うつ病など専門医が行っている日常疾患を一人の医師ができる、等を挙げた。
専門医構築に当たっての基本的な考え方。
・「現状追認」より「あるべき姿」を重視したい。
・地域医療の現場を大切にしたい。
・「家庭医」「病院総合医」両方を大切にしたい。
・ステークホルダー(内科、小児科、医師会、国)との関係性を大切にしたい。
2017年度に専門医制度はスタートする。2014年からVersion2をスタートさせる。新卒の研修医を対象に考えている。
各論:3年、総合診療専門研修を18か月、I群(診療所・小病院)、II群(病院)がある。内科6か月、小児科3か月、救急3か月を必修とした。当該の学会とすり合わせをした。
<協議事項>
・総診部門でどのように卒前教育にかかわっているか。
80%の大学で授業を受け持っている。クリニカルクラークシップの受け入れは75%。
臨床実習、医療面接、地域医療実習、PBL,診断推論等が多い。
臨床教育は各科で分担することが大切である。
・収益向上への取り組みについて。
ER型の救急部と一緒に仕事をする(救急加算をとる)、総合外来と24時間walk in救急に対応している、後方病院を確保し、大学の在院日数を減らす、等で改善が見込める。一方で、大学病院の総合診療科は最後の砦である。収益にこだわらないという視点も大事という点が強調された。
来年は東宝大学が主幹校に決定した。(山本和利)